【この記事の結論・要約】
- Instagram・TikTokの誹謗中傷は、まずアプリ内の「報告」機能から削除依頼を行います。 削除されない場合は、裁判所を通じた「削除仮処分」で対応します。
- 匿名の投稿者でも、「発信者情報開示請求」により氏名・住所を特定し、損害賠償(慰謝料)を請求することが可能です。
- 通信事業者(プロバイダ)のログ保存期間は約3ヶ月~6ヶ月程度と短く、この期間を過ぎると投稿者の特定が困難になります。 ストーリーズ等の証拠が消える前にスクリーンショットを保存し、速やかに弁護士へ相談してください。
はじめに
「インスタのストーリーで、自分の写真を勝手に晒された」 「TikTokのコメント欄で、根拠のない悪口を書かれ炎上している」 「なりすましアカウントを作られ、勝手にDMを送られている」
写真や動画がメインのSNSであるInstagram(インスタグラム)やTikTok(ティックトック)は、若年層を中心に利用者が多く、その拡散力の高さから、ひとたび誹謗中傷が発生すると深刻な被害に発展しやすい傾向にあります。
特に、24時間で消える「ストーリーズ」機能や、匿名性の高い「コメント」欄、閉鎖的な「DM(ダイレクトメッセージ)」は、証拠が残りにくかったり、発見が遅れたりすることから、陰湿な嫌がらせの温床となりがちです。
被害に遭った場合、「時間が経てば収まるだろう」と放置するのは危険です。 デジタルタトゥーとして残り続けるだけでなく、個人情報の特定(晒し)や、職場・学校への通報など、リアルな生活にまで被害が拡大する恐れがあるからです。
本記事では、InstagramやTikTokで誹謗中傷の被害に遭われた方に向けて、ご自身で行う削除依頼(通報)の手順から、削除されない場合の法的手段、そして加害者を特定して損害賠償(慰謝料)を請求する方法について、解説いたします。
Instagram・TikTok特有の誹謗中傷パターン
法的措置をとる前提として、どのような投稿が権利侵害に当たるのかを知っておく必要があります。
両プラットフォームでよく見られる被害には、以下の特徴があります。
Instagramでの被害例
- ストーリーズでの晒し 24時間で消えるため、加害者の罪悪感が薄くなりがちです。顔写真や個人情報を無断で掲載し、スタンプや文字で中傷コメントを載せるケースが多発しています。
- フィード投稿・リールへの悪質コメント 投稿内容とは無関係な容姿への攻撃や、虚偽の事実の書き込みが行われます。
- なりすましアカウント 本人のアイコンやプロフィールを盗用し、わいせつな投稿をしたり、知人に詐欺的なDMを送ったりして、本人の社会的評価を低下させます。
TikTokでの被害例
- 動画の無断転載と晒し 他人が撮影した動画を勝手に保存し、悪意ある編集を加えて再投稿する行為です。「この人、犯罪者らしい」などのデマとともに拡散されることがあります。
- コメント欄での集団リンチ 一つの批判コメントをきっかけに、同調したユーザーが雪だるま式に誹謗中傷を書き込み、炎上状態になることがあります。
法的な「権利侵害」とは
単なる「不快な投稿」というだけでは、法的に削除や特定が認められないことがあります。法的手続きには、以下の権利侵害が必要です。
- 名誉毀損(名誉権侵害): 公然と事実を摘示し、社会的評価を低下させる行為(民法709条・710条、刑法230条1項)。真実であっても、公共性・公益性がない場合は名誉毀損となり得ます(真実性の抗弁につき刑法230条の2第1項)。
- 侮辱(名誉感情侵害): 「バカ」「キモい」などの事実を摘示しない罵詈雑言(刑法231条)。
- プライバシー権侵害: 住所、電話番号、前科、病歴などの公開。一般に、①私生活上の事実であること、②公開を欲しない事柄であること、③一般に知られていない事柄であること、が要件とされています(東京地判昭和39年9月28日「宴のあと」事件参照)。
- 肖像権侵害: 顔写真や容姿が無断で公開されること。みだりに容貌等を撮影されない自由は憲法13条の趣旨に照らして保護されます(最大判昭和44年12月24日・京都府学連デモ事件参照)。
- 著作権侵害: 自分が撮影した写真や動画の無断転載。
自分でできる「削除依頼(報告)」の手順
被害を発見したら、まずはプラットフォームの運営会社に対して、利用規約(コミュニティガイドライン)違反として報告(通報)を行います。
これは裁判所を通さず、無料で行える手続きです。
Instagramでの報告(削除依頼)手順
Instagramの運営元は、アメリカのMeta社(旧Facebook社)です。
【投稿・リールの削除依頼】
- 対象の投稿の右上(または右下)にある「…(三点リーダー)」をタップ。
- 「報告する」を選択。
- 報告理由を選択(例:「いじめ、または望まない接触」「知的財産権」など)。
- 詳細を選択して送信。
【コメントの削除依頼】
- 対象のコメントを左にスワイプ(iPhone)または長押し(Android)。
- 「!」アイコン(報告)をタップ。
- 理由を選択して送信。
【なりすましアカウントの報告】
- なりすましアカウントのプロフィールページへ移動。
- 右上の「…」をタップし、「報告する」を選択。
- 「不適切なコンテンツを投稿している」等の理由を選び進める。
TikTokでの報告(削除依頼)手順
TikTokの法的対応の相手方は、TikTok Pte. Ltd.です。
【動画の削除依頼】
- 対象の動画の右側にある「矢印アイコン(シェア)」をタップ。
- 下段メニューの「報告する」をタップ。
- 違反理由を選択(例:「ヘイトとハラスメント」「個人情報の公開」など)し、詳細を記述して送信。
【コメントの削除依頼】
- 対象のコメントを長押し。
- 「報告する」をタップし、理由を選択して送信。
削除依頼のポイントと限界
これらの報告機能は、あくまでプラットフォームの「ガイドライン」に基づき、AIや運営スタッフが判断するものです。
そのため、あまり柔軟な対応は期待できず、「明らかに規約違反であるもの」以外は「削除されない」ケースも多々あります。
運営側から「違反は確認されませんでした」と通知が来た場合、それ以上同じ方法で通報を繰り返しても効果は薄いです。
次のステップである「法的手続き」へ移行する必要があります。
※なお、この手続きで削除されないことを見越して、早期の段階から法的手続きを取ることも多々あります。
削除されない場合の「法的な削除請求」
アプリからの報告で削除されなかった場合、日本の法律に基づいて「違法(権利侵害)」であることを主張し、削除を求めます。
送信防止措置請求
書面にて、運営会社に対し「この投稿は違法なので削除してください」と申し入れる手続きです。
ただし、Instagram(Meta社)やTikTokのような海外法人の場合、日本の任意の請求には応じない傾向にあります。
情報流通プラットフォーム対処法に基づく迅速処理義務
Instagram(Meta社)およびTikTokの運営会社は、いずれも情報流通プラットフォーム対処法上の大規模特定電気通信役務提供者に指定されています。
これにより、以下の義務が課されています。
- 削除申出窓口の設置義務(法22条)
- 削除申出への対応義務(法25条1項):正当な理由がない限り、一定期間内に対応する義務
- 削除基準の策定・公表義務(法26条)
権利侵害にあたる投稿については、これらの義務に基づいて各社に対し削除を申し出ることが可能です。
裁判所を通じた「削除仮処分」
最も最も確実な方法は、日本の裁判所に対して削除仮処分命令を申し立てることです。
通常の裁判(訴訟)よりも迅速な手続きで、裁判官が「違法である」と認めれば、運営会社に対して削除を命じます。
- Meta社(Instagram)の場合: 日本における代表登記がなされているため、東京地方裁判所などで手続きが可能です。
- TikTokの場合: TikTok Pte. Ltd.に対し、申し立てを行う必要があります。
裁判所の決定が出れば、運営会社は原則として削除に応じます。
犯人を特定する「発信者情報開示請求」
「削除するだけでは気が済まない」 「慰謝料を請求したい」 「二度としないよう誓約させたい」
そう考える場合は、投稿者を特定する「発信者情報開示請求」を行います。 特定までには、大きく分けて2つの段階があります。
ステップ①:SNS運営会社への開示請求
Instagram(Meta社)やTikTok側に対し、投稿者がログインした際のIPアドレスとタイムスタンプの開示を求めます。
削除仮処分と同時にIPアドレスの開示仮処分や発信者情報開示命令(情報流通プラットフォーム対処法5条)を申し立てるのが一般的です。
ステップ②:通信事業者(プロバイダ)への開示請求
開示されたIPアドレスから、「どこの通信会社(ドコモ、KDDI、ソフトバンク、J:COMなど)を使ったか」が判明します。
次に、その通信事業者(プロバイダ)に対して、「その時間に、このIPアドレスを使っていた契約者の氏名・住所を開示せよ」と請求します。
これには原則として「訴訟(裁判)」が必要になりますが、2022年の法改正により、ステップ①と②を一体的に行える「発信者情報開示命令事件」という新しい手続きも利用可能になりました。
投稿者特定の「タイムリミット」に注意
特定手続きにおいて最大の敵は「時間」です。
通信事業者が保有しているアクセスログ(誰がいつネットに接続したかの記録)の保存期間は、一般的に約3ヶ月〜6ヶ月程度と非常に短いです。
この期間を過ぎるとログが消去され、弁護士に依頼しても、技術的に特定が不可能になります。
特に、ステップ①(SNS側からのIP開示)に時間がかかると、ステップ②に行く前にログが消えてしまうリスクがあります。
被害に気づいたら、1日でも早く弁護士に相談することが、特定成功の鍵を握ります。
DM(ダイレクトメッセージ)での誹謗中傷は開示請求が困難
発信者情報開示請求は、「不特定の者によって受信されることを目的とする電気通信」(特定電気通信)を対象とする制度です。
DMは特定の相手方のみに送信されるものであり、この「特定電気通信」に該当しないため、情報流通プラットフォーム対処法に基づく発信者情報開示請求の対象外となります。
DMでの被害については、相手のアカウント情報等から相手方が判明している場合の直接の損害賠償請求や、脅迫罪(刑法222条)等に該当する場合の警察への相談・刑事告訴が主な対処法となります。
特定後の責任追及(損害賠償・刑事告訴)
無事に投稿者の身元が特定できた後は、以下の法的措置をとることができます。
民事責任:損害賠償(慰謝料)請求
加害者に対し、不法行為(民法709条)に基づく損害賠償を請求します。
慰謝料の一般的な相場:
| 権利侵害の種類 | 慰謝料の目安 |
|---|---|
| 名誉毀損(個人) | 10万~50万円程度 |
| 名誉毀損(事業者) | 50万~100万円以上(業務への影響による) |
| 侮辱(名誉感情侵害) | 数万~20万円程度 |
| プライバシー侵害 | 10万~50万円程度 |
※投稿の悪質性(執拗な繰り返し・性的な晒し行為等)、拡散の規模、被害者の社会的地位などにより大きく変動します。
投稿者特定のためにかかった弁護士費用(調査費用)の一部も損害として請求できる場合があります。
全額が認められた裁判例もあれば、その一部にとどまる裁判例もあります。
刑事責任:刑事告訴
投稿内容が極めて悪質な場合(執拗な殺害予告、リベンジポルノ、悪質な名誉毀損など)は、警察に刑事告訴を行い、刑事罰(懲役や罰金)を求めることも検討します。
- 名誉毀損罪(刑法230条1項): 3年以下の拘禁刑又は50万円以下の罰金
- 侮辱罪(刑法231条): 1年以下の拘禁刑若しくは30万円以下の罰金又は拘留若しくは科料(※2022年7月の法改正で法定刑が引き上げられました)
- 脅迫罪(刑法222条): 2年以下の拘禁刑又は30万円以下の罰金
名誉毀損罪と侮辱罪はいずれも親告罪であり、犯人を知った日から6ヶ月以内に告訴する必要があります(刑法232条1項、刑事訴訟法235条)。
費用・期間の目安
Instagram・TikTokでの誹謗中傷への法的対応にかかる費用と期間の一般的な目安は以下のとおりです。
なお、具体的な金額は事案の内容や難易度によって異なります。
削除対応
- アプリ内の報告機能: 無料。審査結果は通常数日~1週間程度で通知されます
- 弁護士による削除仮処分: 弁護士費用(着手金+報酬金)に加え、法務局への担保金の供託が必要(手続き終了後に返還されます)。期間は申立てから1~2ヶ月程度
投稿者の特定(発信者情報開示請求)
- 費用: 弁護士費用(着手金+報酬金)+裁判手続き費用
- 期間: SNS運営会社への開示請求+プロバイダへの開示請求で合計3~6ヶ月程度
損害賠償請求
- 費用: 弁護士費用(着手金+報酬金)
- 期間: 示談交渉で解決する場合は1~3ヶ月程度。訴訟に至る場合はさらに半年~1年程度
※弊所の弁護士費用については、以下のページをご参照ください。

弁護士に依頼するメリット
InstagramやTikTokの誹謗中傷対応は、ご自身で行うには限界があります。
法的対応を行う場合には、基本的に弁護士にご依頼されることをお勧めいたします。
複雑な手続きの代行
仮処分の申立てや、法的な主張構成(どの権利侵害にあたるか)など、専門的な手続きをすべて弁護士に任せることができます。
スピード対応によるログ消失の回避
弁護士は、ログ保存期間のタイムリミットを想定して手続きを行います。
迅速に仮処分を申し立てたり、プロバイダに対して「裁判が終わるまでログを消さないでほしい」という要請(ログ保存要請)を行ったりして、特定不能になるリスクを最小限に抑えます。
加害者との直接交渉を回避
特定後の示談交渉において、被害者本人が加害者と連絡を取ることは精神的に大きな負担です。
弁護士が代理人となることで、相手と直接関わることなく、適切な条件での解決を目指すことができます。
よくある質問(FAQ)
- Instagramで誹謗中傷されたコメントを削除してもらうにはどうすればいいですか?
-
まずはInstagramアプリ内の「報告」機能を使って削除依頼を行ってください。
報告しても削除されない場合は、弁護士を通じた法的な削除請求(削除仮処分)を検討する必要があります。 - TikTokの誹謗中傷動画を通報したのに削除されません。どうしたらいいですか?
-
TikTokの通報で削除されない場合は、弁護士による法的な削除請求が有効です。
TikTok運営会社に対する送信防止措置請求書の送付、または裁判所への削除仮処分の申立てという方法があります。 - InstagramやTikTokで誹謗中傷した犯人を特定できますか?
-
はい、発信者情報開示請求により匿名の投稿者を特定できる可能性があります。
SNS運営会社(Meta社・TikTok Pte. Ltd.)に対してIPアドレス等の開示を求め、次にプロバイダに契約者情報の開示を請求する2段階の手続きが必要です。
ただし、通信事業者(プロバイダ)のログ保存期間(約3ヶ月~6ヶ月程度)を過ぎると特定が困難になるため、早期の対応が重要です。 - SNSの誹謗中傷で慰謝料はいくらくらい請求できますか?
-
権利侵害の種類によりますが、個人の名誉毀損で10万~50万円程度、事業者の名誉毀損で50万~100万円以上、侮辱で数万~20万円程度、プライバシー侵害で10万~50万円程度が一般的な目安です。
投稿の悪質性や拡散の規模により変動します。 - 発信者情報開示請求にはタイムリミットがあると聞きましたが、いつまでに動けばいいですか?
-
通信事業者(プロバイダ)がアクセスログを保存している期間は、一般的に約3ヶ月~6ヶ月程度です。
この期間を過ぎるとログが削除され、投稿者の特定が極めて困難になります。
投稿のスクリーンショット保存と並行して、できるだけ早く弁護士に相談してください。 - InstagramのDM(ダイレクトメッセージ)での誹謗中傷も法的に対処できますか?
-
DMでの誹謗中傷も法的対処の対象になり得ます。
脅迫罪(刑法222条)や侮辱罪(刑法231条)、ストーカー規制法違反などに該当する場合は刑事・民事の両面から対応可能です。ただし、DMは「不特定の者によって受信されることを目的とする電気通信」(特定電気通信)に該当しない可能性が高く、情報流通プラットフォーム対処法に基づく発信者情報開示請求の対象外となる場合があります。
また、DMは第三者に公開されていないため、名誉毀損(公然と事実を摘示することが要件)も成立しにくい点に注意が必要です。DMでの被害は、警察への相談・刑事告訴や、相手が判明している場合の直接の損害賠償請求が主な対処法となります。
DMのスクリーンショットを証拠として保全したうえで、弁護士または警察に相談してください。
おわりに
InstagramやTikTokでの誹謗中傷は、匿名性を盾にした卑劣な行為です。
しかし、法的な手続きを踏めば、投稿者を特定し、相応の責任を取らせることは十分に可能です。
重要なのは、「証拠を消さないこと」と「すぐに動くこと」です。
- ストーリーズやDMは、消える前にスクリーンショットや画面録画で保存する。
- URL(アカウントや投稿のリンク)を控える。
- そして、ログが残っているうちに弁護士へ相談する。
「これくらいで相談していいのかな」と迷っている間にも、特定のチャンスは失われていきます。
泣き寝入りせず、ご自身の権利と平穏な生活を取り戻すために、まずはインターネット問題に詳しい弁護士にご相談ください。
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