【この記事の結論・要約】
- 現在の刑法には不倫そのものを処罰する規定はなく、浮気や不倫をしたことを理由に逮捕されることはありません。ただし、不倫は民法上の不法行為として慰謝料の責任を負うことがあり、裁判上の離婚原因にもなります。
- 相手が18歳未満であった場合や、相手の意思に反する性的行為、別れ話の後のつきまといなどは、不倫とは別に犯罪になることがあります。
- 不倫をされた側も、不倫を周囲に言いふらす、「ばらす」と告げて金銭を求める、証拠を集めるために配偶者のSNSに無断でログインする、といった行為をすると、犯罪や損害賠償の責任を問われることがあります。
はじめに
配偶者の不倫がわかったとき、「不倫は犯罪ではないのか」「警察に訴えられないのか」と考える方がいます。
反対に、既婚者と交際していた側が、「不倫をしたことで逮捕されるのではないか」と不安になることもあります。
結論からいえば、現在の日本では、不倫そのものは犯罪ではありません。
しかし、犯罪ではないからといって、法律上の責任を負わないわけではありません。
また、不倫をめぐる行動の中には、不倫をした側にとっても、不倫をされた側にとっても、犯罪になるものがあります。
本稿では、不倫が犯罪ではない理由、刑事責任と民事責任の違い、不倫をした側と不倫をされた側のそれぞれについて犯罪になり得る行為を解説します。
不倫そのものは犯罪ではない
不倫を処罰する規定はない
犯罪として処罰されるのは、刑法などの法律で、処罰の対象として定められた行為に限られます。
現在の刑法やその他の法律には、配偶者以外の者と性的関係を持つこと自体を処罰する規定はありません。
そのため、浮気や不倫をしたことを理由に、逮捕されたり刑罰を科されたりすることはありません。
姦通罪は昭和22年に廃止された
かつての刑法には、夫のある妻が夫以外の男性と性的関係を持った場合に、妻とその相手の男性を処罰する「姦通罪」の規定がありました(旧刑法183条)。
この規定は、夫の側の不倫は処罰の対象としない、男女で扱いの異なるものでした。
男女の平等を定めた日本国憲法のもとで、昭和22年の刑法改正により削除されました。
それ以降、不倫を処罰する規定は設けられていません。
重婚は犯罪になる
不倫とは異なり、配偶者のある者が重ねて婚姻をすることは、重婚罪として処罰の対象になります(刑法184条)。
その相手方となって婚姻をした者も、同様に処罰の対象になります。
もっとも、重婚罪は二重に婚姻の届出をした場合などを想定したものであり、配偶者以外の者と交際したり、同棲したりするだけでは当たりません。
恋人同士の浮気も犯罪ではない
結婚していない恋人同士の浮気も、犯罪にはなりません。
また、恋人同士の関係は、法律上の夫婦と異なり、原則として慰謝料の対象にもなりません。
婚約中の浮気は、婚約の不当な破棄として慰謝料の請求が問題になる場合があります。
刑事責任と民事責任の違い
犯罪でなくても慰謝料の責任を負う
法律上の責任には、国が刑罰を科す刑事責任と、被害を受けた人に損害を賠償する民事責任があります。
不倫は、刑事責任の対象にはなりませんが、民法709条の不法行為として、民事責任の対象になります。
不倫をした配偶者と不倫相手は、もう一方の配偶者の婚姻共同生活の平和を害したことについて、慰謝料を支払う責任を負うことがあります。
また、不貞行為は、裁判上の離婚原因にもなります(民法770条1項1号)。
どこからが法律上の不貞行為に当たるかについては、以下の記事で解説しています。

慰謝料を払わないことも犯罪ではない
慰謝料を請求されて支払わないことも、それ自体は犯罪ではありません。
ただし、判決などが確定すれば、給与や預貯金を差し押さえられることがあります。
また、裁判所の財産開示手続に正当な理由なく出頭しなかったり、虚偽の陳述をしたりすると、刑事罰の対象になります(民事執行法213条)。
慰謝料を払えない場合の扱いについては、以下の記事で解説しています。

不倫をした側が犯罪になる場合
不倫そのものは犯罪ではありませんが、不倫に伴う行為が、別の犯罪に当たることがあります。
相手が18歳未満の場合
交際相手が18歳未満であった場合、性的関係を持つことは、各都道府県の青少年健全育成条例に違反する可能性があります。
金銭などの対価を渡して性的関係を持った場合は、児童買春(児童買春・児童ポルノ禁止法4条)に当たります。
さらに、相手が16歳未満の場合は、同意があっても不同意性交等罪(刑法177条3項)が成立することがあります。
これらは、相手が既婚者かどうかとは関係なく成立します。
相手の意思に反する性的行為
相手が同意していないのに性的行為をした場合は、不同意性交等罪(刑法177条)や不同意わいせつ罪(刑法176条)に当たります。
上司と部下の関係など、立場の違いを利用して性的行為に応じさせた場合も、これらの罪に当たる場合があります。
別れ話の後のつきまとい
不倫関係が終わった後、相手に会うよう迫って待ち伏せをしたり、拒まれているのに繰り返し連絡をしたりすると、ストーカー規制法の規制の対象になることがあります。
警察からの警告や禁止命令の対象となり、悪質な場合はストーカー行為罪として処罰の対象になります。
性的な画像の無断撮影・公開
相手の同意を得ずに性的な姿を撮影することは、性的姿態撮影等処罰法による撮影罪に当たる可能性があります。
また、交際中に撮影した性的な画像を、別れた後に相手の同意なくインターネットに公開したり、第三者に送ったりすると、リベンジポルノ防止法(私事性的画像記録の提供等による被害の防止に関する法律)違反に当たります。
不倫をされた側が犯罪になる場合
不倫をされた側は被害者の立場にありますが、怒りや証拠集めの中でとった行動が、犯罪や損害賠償の対象になることがあります。
慰謝料を請求する立場であっても、とってよい手段には限りがあります。
勤務先や近所、SNSで不倫を言いふらす
不倫相手の勤務先や近所の人に不倫の事実を伝えたり、SNSに書き込んだりすると、名誉毀損罪(刑法230条)に当たる可能性があります。
名誉毀損罪は、公然と事実を示して人の社会的評価を低下させた場合に成立し、示した事実が真実であっても成立し得ます。
民事上も、名誉毀損として損害賠償の対象になります。
東京地裁平成22年3月29日判決(平成18年(ワ)第16095号ほか・判例時報2099号49頁)は、法律事務所を共同で経営していた弁護士が、もう一人の弁護士について、事務員と不倫をしているという内容を、双方の配偶者や依頼者である労働組合の役員、同期の弁護士、裁判所の書記官などに告げたり、文書で送ったりした事案です。
裁判所は、次のように述べて、慰謝料30万円の支払を命じました。
(中略)原告は,多数の人に対し,被告とDが不倫をしているなどの文書を送付したり告げて回っているところ,被告が不倫をしているなどの風評は被告の家庭人及び弁護士としての社会的評価を低下させるものであるから,原告の係る行為は被告の名誉を毀損する不法行為に当たるというべきである。
ここでいう「原告」は不倫の話を広めた弁護士、「被告」は不倫をしていると言われた弁護士を指します。
不倫の事実を周囲に広める行為は、それが真実かどうかにかかわらず、損害賠償の対象になり得ることを示しています。
「ばらす」と告げて金銭や示談を求める
不倫相手に対し、「慰謝料を払わなければ会社にばらす」「家族に知らせる」と告げて支払を求めると、恐喝罪(刑法249条)に当たる可能性があります。
金銭以外でも、退職や誓約書への署名など、義務のないことを脅して行わせれば、強要罪(刑法223条)に当たる可能性があります。
また、相手やその家族の生命、身体、名誉などに害を加えると告げれば、脅迫罪(刑法222条)に当たります。
慰謝料を請求する権利があっても、請求の方法が許される範囲を超えれば、犯罪になることがあります。
相手の自宅や勤務先に押しかける・手を出す
話をつけるために不倫相手の自宅に押しかけ、許可なく立ち入ったり、退去を求められても居座ったりすると、住居侵入罪や不退去罪(刑法130条)に当たる可能性があります。
相手を叩いたり、突き飛ばしたりすれば、暴行罪(刑法208条)や傷害罪(刑法204条)に当たります。
前記の東京地裁平成22年3月29日判決では、不倫の現場を撮影しようとした側について、撮影を拒まれた後も相手を追いかけて撮影を続けた行為が、肖像権ないしプライバシーの侵害に当たるとして、慰謝料3万円が認められました。
一方で、カメラを取り上げようとして撮影者を10回程度蹴った側についても、慰謝料10万円の支払が命じられています。
不倫をめぐる現場でのもみ合いは、双方に責任が生じる結果になりかねません。
証拠集めの方法
不倫の証拠を集める際にも、方法によっては犯罪になります。
配偶者のIDとパスワードを無断で使って、LINEやSNS、メールのアカウントにログインすることは、不正アクセス禁止法違反に当たる可能性があります。
証拠を得るために不倫相手の住居に立ち入れば、住居侵入罪の問題になります。
尾行やGPS機器による位置の確認も、態様によっては、ストーカー規制法などとの関係で問題になる可能性があります。
違法な方法で集めた証拠は、それ自体が新たな紛争の原因になるおそれがあります。
不倫の証拠の集め方については、以下の記事で解説しています。

不倫について警察に相談できるか
不倫そのものは犯罪ではないため、配偶者が不倫をしたことを理由に警察に相談しても、警察が捜査をすることはありません。
不倫について責任を問う場合は、慰謝料の請求や離婚の手続など、民事の手続によることになります。
慰謝料請求の流れについては、以下の記事で解説しています。

一方で、不倫をめぐって、脅迫やつきまとい、暴力などの被害を受けている場合は、警察に相談することができます。
不倫をした側であっても、脅迫などの被害を受けていれば、被害者として警察に相談することができます。
よくある質問(FAQ)
- 浮気や不倫をすると、逮捕されることはありますか?
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現在の法律には不倫そのものを処罰する規定はないため、浮気や不倫をしたことを理由に逮捕されることはありません。
ただし、相手が18歳未満であった場合や、相手の意思に反する性的行為があった場合などは、別の犯罪に当たることがあります。
- 配偶者の不倫相手を刑事告訴できますか?
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不倫そのものは犯罪ではないため、不倫をしたことを理由に刑事告訴することはできません。
不倫相手から脅迫やつきまといなどの被害を受けている場合は、その行為について警察に相談したり、告訴したりすることが考えられます。 - 不倫の証拠を集めるために、配偶者のスマホを見てもよいですか?
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配偶者のIDとパスワードを無断で使ってLINEやSNSにログインすることは、不正アクセス禁止法違反に当たる可能性があります。
違法な方法で集めた証拠は新たな紛争の原因になるおそれがあるため、証拠の集め方は慎重に選ぶ必要があります。 - 不倫相手のことをSNSに書き込むと、どうなりますか?
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不倫相手を特定できる形で不倫の事実を書き込むと、名誉毀損罪に当たる可能性があり、民事上も損害賠償を請求されることがあります。
書き込んだ内容が真実であっても、責任を問われることがあります。 - 「慰謝料を払わないと会社にばらす」と言うのは犯罪ですか?
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慰謝料を請求する権利があっても、勤務先に知らせると告げて支払を求めると、恐喝罪に当たる可能性があります。
慰謝料の請求は、書面で金額と根拠を示すなど、許される方法で行う必要があります。 - 不倫の慰謝料を払わないと、犯罪になりますか?
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慰謝料を支払わないこと自体は犯罪ではありません。
ただし、判決などに基づいて給与や預貯金を差し押さえられることがあり、裁判所の財産開示手続に正当な理由なく出頭しないと刑事罰の対象になります(民事執行法213条)。
まとめ
- 現在の法律には不倫そのものを処罰する規定はなく、浮気や不倫を理由に逮捕されることはない。姦通罪は昭和22年に廃止された。
- 不倫は犯罪ではないが、民法709条の不法行為として慰謝料の責任を負うことがあり、裁判上の離婚原因にもなる。
- 相手が18歳未満であった場合、相手の意思に反する性的行為、別れた後のつきまとい、性的な画像の無断撮影・公開などは、不倫とは別に犯罪になる。
- 不倫をされた側も、不倫を言いふらす、「ばらす」と告げて金銭を求める、相手の自宅に押しかける、配偶者のSNSに無断でログインするといった行為をすると、犯罪や損害賠償の責任を問われることがある。
- 不倫について責任を問う場合は、慰謝料の請求や離婚など、民事の手続によることになる。
当事務所では、不倫の慰謝料を請求したい方からのご相談と、慰謝料を請求された方からのご相談の両方をお受けしています。
不倫について責任を問う場合も、責任を問われている場合も、とるべき手段を誤ると、新たな紛争を生むことがあります。
配偶者の不倫に対してどのような手段をとるべきか迷っている場合や、不倫をめぐって脅されている場合は、当事務所にご相談ください。
感情的な行動に出る前に、お早めにご相談ください。
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