詐欺事件で逮捕された方・ご家族の方へ
「闇バイトに応募してしまい、受け子として逮捕された」「家族が特殊詐欺の指示役として捕まった」「投資話を持ちかけたところ警察から事情聴取を求められた」「無銭飲食で警察に連行された」――詐欺事件は社会問題化している類型から日常的な事案まで幅広く、いずれも罰金刑のない重罪です。
特殊詐欺の末端実行犯(受け子・出し子)は初犯でも実刑判決を受けることが多く、初動の弁護活動が結果を大きく左右します。
当事務所では、詐欺事件・特殊詐欺事件について、早期釈放、被害者との示談交渉、不起訴処分の獲得、執行猶予判決の獲得を目指した刑事弁護を提供しています。
詐欺罪の構成要件と法定刑
詐欺罪は刑法246条に規定されており、人を欺いて財物を交付させる行為(1項詐欺)と、財産上不法の利益を得る行為(2項詐欺、別名「詐欺利得罪」)を処罰します。
法定刑・公訴時効
- 10年以下の拘禁刑
- 罰金刑なし
- 未遂も処罰(刑法250条)
- 公訴時効:7年
罰金刑がないことが重要です。
略式起訴による簡易な処理ができず、起訴されれば公開法廷での正式裁判となり、有罪の場合は前科がつきます。
構成要件(以下4つの全てを満たし、相互に因果関係が認められる必要があります)
- 人を欺く行為(欺罔行為)
- 被害者の錯誤
- 被害者による交付行為(処分行為)
- 財物または財産上の利益の移転
このいずれかが欠けると詐欺未遂罪にとどまります。
例えば「だまされたふり」で被害者が実際には錯誤に陥っていない場合は、欺罔行為があっても既遂とはならず未遂となります。
故意の存在
- 詐欺罪の成立には「人をだます意思(欺罔の故意)」が必要
- 「借りた当時は返すつもりだった」「結婚するつもりはあった」等の弁解により故意が争われることが多い
- 客観証拠(資金移動の流れ、メッセージ履歴、通帳記録等)により故意が立証される
親族相盗例の準用(刑法251条・244条)
- 配偶者、直系血族、同居の親族との間の詐欺は、刑が免除される
- それ以外の親族(兄弟姉妹、いとこ等)は親告罪となり、告訴がなければ起訴できない
詐欺罪の主な類型
特殊詐欺
- オレオレ詐欺(親族・警察官・弁護士等を装う)
- 預貯金詐欺(市役所職員等を装う)
- 架空料金請求詐欺(未払料金等の名目)
- 還付金詐欺(税金・保険料の還付名目)
- キャッシュカード詐欺盗(カードを準備させて隙を見て窃取)
SNS型投資・ロマンス詐欺
- SNS上で投資話を持ちかける手口
- マッチングアプリ・SNSで恋愛感情を利用して金銭を要求する手口
- 令和6年の被害額が特殊詐欺を上回り、社会問題化
その他の典型例
- 結婚詐欺
- 投資詐欺
- 給付金詐欺・補助金詐欺
- 無銭飲食・無銭宿泊(2項詐欺)
- 取込み詐欺(代金支払の意思なく商品を発注)
関連罪
- 電子計算機使用詐欺罪(刑法246条の2):コンピュータを欺いて利益を得る行為
- 準詐欺罪(刑法248条):未成年者・精神障害者の判断力不足に乗じる行為
特殊詐欺と組織的犯罪処罰法
特殊詐欺グループの一員として行った詐欺行為は、組織的犯罪処罰法3条1項13号により加重処罰されます。
通常の詐欺罪
- 10年以下の拘禁刑
組織的犯罪処罰法違反(組織的詐欺)
- 1年以上の有期拘禁刑(上限20年)
「組織的に行った」と認められる要件
- 共同の目的を有する多数人の経済的結合体
- 団体の目的・意思を実現する行為が組織的に反復継続して行われる
- 暴力団・半グレ集団・特殊詐欺グループだけでなく、不良仲間同士で組織的に犯罪を繰り返す場合も該当
実務上、「SNSで募集された闇バイトに応募して受け子をしただけ」という末端実行犯であっても、背後の組織性が認められれば組織的犯罪処罰法違反として立件される可能性があります。
詐欺事件の動向
法務省「令和7年版犯罪白書」(令和6年データ)によれば、詐欺の認知件数は57,324件(前年比1万1,313件・24.6%増)と急増しています。検挙率は28.2%で、前年比8.0ptの低下です。
参考:令和7年版犯罪白書 第1編/第1章/第2節/3 (https://hakusyo1.moj.go.jp/jp/72/nfm/n72_2_1_1_2_3.html)
特殊詐欺の動向(警察庁公表値)
- オレオレ型特殊詐欺:認知件数10,413件、被害額502.2億円(前年比認知16.7%増、被害額148.9%増)
- 架空料金請求詐欺:認知件数5,716件、被害額133.8億円
- SNS型投資・ロマンス詐欺:認知件数10,237件、被害額1,271.9億円(前年比認知166.2%増、被害額179.4%増)
出典:警察庁「令和6年における特殊詐欺及びSNS型投資・ロマンス詐欺の認知・検挙状況等について(確定値版)」(令和7年5月23日公表)
(https://www.npa.go.jp/bureau/criminal/souni/tokusyusagi/hurikomesagi_toukei2024.pdf)
検挙された末端実行犯の動向
- 受け子・出し子・見張り役の検挙が依然として多い
- SNSで実行犯を募集する手口(いわゆる闇バイト)が深刻化
- 暴力団構成員等が主導的立場で関与する実態
検挙率は他の刑法犯より低いものの、末端実行犯(受け子・出し子)は現場で逮捕されるケースが多く、SNS型詐欺の捜査も技術的に進歩しています。「逃げ切れる」と考えるのは危険です。
受け子・出し子で逮捕された場合の量刑
特殊詐欺の末端実行犯である受け子・出し子は、以下のような理由から初犯でも実刑判決を受けることが多い類型です。
- 詐欺罪は法定刑が10年以下の拘禁刑のみで、罰金刑がない
- 起訴された場合、公判での量刑判断において執行猶予が付くか否かが焦点
- 特殊詐欺は高齢者を狙う計画的・組織的犯罪として悪質性が高く評価される
- 反社会的勢力の資金源となっていることが多い
- 被害金額が大きい(数百万円から数千万円)
- 共犯者が多数存在し、被害弁償が困難
執行猶予獲得のために必要な要素
- 被害弁償(被害者ごとの示談成立または弁済供託)
- 関与の従属性(単に指示に従っただけで主導的役割を果たしていないこと)
- 加担の経緯(闇バイト募集に騙された等の事情)
- 共犯者との関係を断つこと
- 家族の監督体制
- 反省と再犯防止策
「闇バイトと知らずに応募した」「詐欺だとは思わなかった」という弁解は実務上ほぼ通りません。
最高裁判所も、詐欺の故意を否認した受け子に有罪判決を出しています。
SNSで応募する高額・短時間アルバイトの多くは詐欺関連であることが、社会通念として広く認識されているためです。
特殊詐欺の実刑率データ
法務省「令和3年版犯罪白書」の特別調査(東京・横浜・さいたま・千葉の各地裁で詐欺関連の有罪判決を受けた特殊詐欺事犯者202人を対象)によれば、特殊詐欺事犯者の実刑率は次のとおりです。
全体の科刑状況
- 全部実刑:67.3%
- 全部執行猶予:32.7%
役割別の全部実刑率
- 主犯・指示役:84.2%
- 架け子:83.6%
- 犯行準備役:64.5%
- 受け子・出し子:54.9%
関与事件数別の全部実刑率
- 1件のみ:34.7%
- 2件:72.1%
- 3件:92.3%
- 5件以上:92.3%
刑期の中心は2年以上3年以下(30.2%)、次いで3年を超え5年以下(21.2%)となっています。
参考:令和3年版犯罪白書 第8編/第5章/第3節/4 (https://hakusyo1.moj.go.jp/jp/68/nfm/n68_2_8_5_3_4.html)
このデータが示すのは次の3点です。
第1に、組織末端の受け子・出し子であっても、5割以上が実刑判決を受けています。「末端だから軽く済む」という認識は実態と一致しません。
第2に、関与事件が2件以上になると実刑率が7割を超え、3件以上ではほぼ確実に実刑となります。再逮捕を許して被害者数が増えるほど、執行猶予獲得の余地は急速に失われます。
第3に、特殊詐欺事件全体の実刑率(67.3%)は、詐欺事件全体の実刑率(令和2年で47.2%)を約20ポイント上回っています。同じ詐欺罪でも、特殊詐欺は明確に重く扱われています。
実刑を回避するためには、初動の段階で示談を進め、関与事件数の積み増しを止めることが重要です。
なお、当事務所では、関与事件が複数あり、かつ、被害総額が高額(1000万円以上)である事例において執行猶予を獲得した実績もあります。
逮捕されてから判決までの流れ
逮捕から起訴・不起訴決定まで(最大23日間)
- 逮捕後48時間以内に検察官に送致
- 送致後24時間以内に検察官が勾留請求
- 裁判官が勾留決定(10日間)
- 検察官が勾留延長請求(さらに最大10日間)
- 起訴・不起訴決定
特殊詐欺事件は、共犯者との接触による証拠隠滅のおそれが高いと判断され、勾留決定率が極めて高い類型です。
接見禁止が付されることも多く、家族の面会が制限されます。
再逮捕の可能性
- 特殊詐欺事件では、別の被害者に対する詐欺行為について再逮捕が繰り返されることがある
- 1事件あたり最大23日の勾留が、被害者の数だけ繰り返される可能性
- 身柄拘束期間が数ヶ月に及ぶ事案も珍しくない
起訴後の処理
- 公判請求(正式裁判)が原則
- 起訴から約1〜2か月後に第1回公判
- 自白事件であれば1〜2回で結審
- 否認事件は複数回の公判を経る
示談・被害弁償の重要性と相場
詐欺事件における示談・被害弁償は、刑事処分結果を左右する最重要要素です。
示談が成立した場合に得られる効果
- 捜査段階:不起訴処分(起訴猶予)の獲得可能性
- 勾留段階:示談成立を理由とした釈放
- 起訴後:執行猶予判決の獲得
- 民事面:将来の損害賠償請求リスクの解消
示談金の特徴
- 詐欺事件は被害金額自体が示談金のベース
- 騙し取った金額の全額返還が基本
- 加えて慰謝料・迷惑料として10万円〜50万円程度を上乗せするのが一般的
- 被害金額が大きく一括返済が困難な場合は、分割払い・連帯保証人付き等の交渉を検討
被害者が複数いる場合の対応
- 全被害者との個別示談が原則
- 共犯者全員での連帯責任となるため、共犯者間の負担割合の調整も必要
- 共犯者の検挙状況によっては、共犯者からの償還を見込んだ示談設計も検討
被害弁償が困難な場合の選択肢
- 弁済供託(法務局への損害賠償相当額の寄託)
- 贖罪寄付(公益団体への寄付)
- 反省文・謝罪文の提出
これらは示談成立に劣るものの、被害弁償の意思を客観的に示す手段として、量刑軽減に向けた弁護活動に組み込まれます。
ご家族が詐欺で逮捕されたときに
すぐに行うべきこと
- 弁護士に接見を依頼する(接見禁止がついていることが多く、家族でも面会できない)
- 警察署と担当部署を確認する
- 弁護士費用と被害弁償金の準備
- 闇バイトの応募経路(SNSの履歴等)の保存
避けるべきこと
- 家族が単独で警察に事情を聞きに行く
- 共犯者や関係者と連絡を取ろうとする
- スマートフォン・パソコン・SIMカード等の処分(罪証隠滅と判断される)
- SNS等での発信
- 騙し取った金銭の使い込み
被害者との示談交渉は、加害者本人や家族が直接行うことは不可能です。
被害者は加害者を強く警戒しているため、必ず弁護士を介して進めます。
会社・学校への対応
- 特殊詐欺事件は身柄拘束が長期化しやすく、勤務先・学校への発覚はほぼ避けられない
- 釈放後の対応(謝罪、退職・退学回避の交渉)を弁護士と相談
- 在宅事件として進む軽微な詐欺(無銭飲食等)であれば発覚を防げる場合がある
当事務所のサポート内容
捜査段階
- 逮捕直後の接見と方針説明
- 勾留阻止に向けた意見書提出
- 勾留決定に対する準抗告
- 被害者との示談交渉
- 弁済供託・贖罪寄付の手続
- 不起訴処分獲得に向けた検察官への意見書提出
- 再逮捕の見通しに関する助言
公判段階
- 保釈請求
- 示談交渉の継続
- 関与の従属性・加担経緯の立証
- 情状立証
- 執行猶予獲得に向けた弁護
- 量刑不当を争う控訴
否認事件・争点のある事件
- 故意(欺罔の意思)の不存在の主張
- 関与の有無・程度に関する争い
- 共犯関係の不存在の主張
- 客観証拠(メッセージ履歴、通信記録、防犯カメラ映像)の精査
- 無罪判決獲得に向けた弁護
弁護士が初動から判決まで一貫して担当します。担当者が途中で変わることはありません。
よくあるご質問
- 闇バイトと知らずに応募してしまいました。詐欺の故意はないと主張できますか。
-
実務上、この主張が認められるケースはほぼありません。
最高裁判所も、詐欺と認識していなかったと主張する受け子に有罪判決を出しています。
SNSで募集される高額・短時間バイトの多くが詐欺関連であることは社会通念として認識されており、安易な参加自体が「故意あり」と判断される根拠となります。ただし、応募経緯や指示の内容次第では、関与の従属性や加担経緯として量刑軽減の事情にはなり得ます。
- 受け子で初犯です。執行猶予は付きますか。
-
詐欺罪には罰金刑がなく、特殊詐欺は悪質性が高く評価されるため、初犯でも実刑判決となるケースが少なくありません。
執行猶予獲得には、被害弁償の実施、関与の従属性の立証、家族の監督体制の構築など、複数の要素を積み上げる必要があります。
- 被害者の連絡先が分かりません。どう示談交渉を進めたら良いですか。
-
弁護士が警察・検察に対し、被害者の連絡先(または代理人弁護士の連絡先)の取次ぎを依頼します。
本人や家族が独自に被害者を探そうとすると証拠隠滅や被害者威迫と判断されるリスクがあるため、絶対に避けてください。 - 騙し取った金額が大きすぎて全額返済できません。どうすればよいですか。
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一括返済が困難でも、分割払いや連帯保証人を付ける形で示談を目指します。
共犯者の検挙状況によっては、共犯者からの償還を見込んだ設計も検討します。それでも困難な場合は、弁済供託や贖罪寄付により被害弁償の意思を示します。
- 弁護士費用はいくらかかりますか。
-
事案の複雑さ、共犯者の数、被害者の数、想定される手続によって異なります。
当事務所では着手金・報酬金を事前に明示し、見通しと併せてご説明します。
当事務所の料金体系についてはこちらのページもご確認ください。 - 再逮捕の可能性があると言われました。どういう意味ですか。
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特殊詐欺事件では、複数の被害者に対する詐欺行為について、被害者ごとに別事件として再逮捕されることがあります。
1事件あたり最大23日の勾留が繰り返されるため、身柄拘束期間が数ヶ月に及ぶ可能性があります。被害者全員との示談を早期に進めることが、再逮捕の抑制と量刑軽減につながります。
- SNSの履歴を消した方がよいですか。
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絶対に消してはいけません。
罪証隠滅と判断され、勾留期間の長期化、保釈の却下、量刑の悪化につながります。
むしろ闇バイト募集に応募した経緯を示す履歴は、関与の従属性や故意の認識度を示す資料として、弁護活動に活用できる場合があります。
まずはお気軽にご相談ください
詐欺事件は、初動の早さと示談の進め方が結果を大きく左右します。
特に特殊詐欺の末端実行犯は、初犯でも実刑判決を受けるリスクが高い類型です。
逮捕されている場合は身柄拘束が長期化する前に、在宅捜査の場合は起訴される前に、できるだけ早くご相談ください。
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