【この記事の結論・要約】
- 闇バイト(強盗致傷等)は極めて重い罪であり、初犯でも実刑や無期懲役の可能性があります。
- 「指示されただけ」「脅されていた」という事情だけでは、罪を免れることは困難です。
- 早期に弁護士が介入し、自首の検討や被害弁償、捜査協力を行うことが減刑への唯一の道です。
はじめに
SNSや掲示板での「高額バイト」「即日現金」といった甘い言葉に誘われ、特殊詐欺の受け子や、強盗の実行役として加担してしまう「闇バイト」事件が後を絶ちません。
警察庁の強化対策により摘発が急増していますが、逮捕された実行役の多くは「仕事の内容を知らなかった」「家族に危害を加えると脅されて断れなかった」と供述します。
しかし、たとえ末端の実行役であっても、その行為が強盗や詐欺である以上、「懲役10年以上」や「無期懲役」といった極めて重い判決が下される事例が相次いでいます。
本稿では、闇バイトで逮捕された場合に適用される罪名と量刑相場、実際の判決傾向、そして弁護士が介入することで何ができるのかについて、解説します。
第1章:闇バイトで逮捕された後の刑事手続きの流れ
闇バイト事件は組織的犯罪であるため、一般の刑事事件よりも身柄拘束が長期化しやすく、保釈も認められにくい傾向にあります。
1-1. 逮捕から勾留まで(最大23日間)
- 逮捕:警察署の留置場に収容されます。外部との連絡は遮断されます。
- 送致:48時間以内に検察庁へ送られます。
- 勾留決定:検察官の請求により、裁判官が原則10日、最大20日の勾留を決定します。
闇バイトの場合、共犯者との口裏合わせや証拠隠滅の恐れが高いため、「接見禁止」(弁護士以外との面会禁止)が付くことが一般的です。
接見禁止が付された場合、家族であっても面会できません。
1-2. 起訴と裁判員裁判
捜査の結果、検察官が「起訴」を決定すると、正式な刑事裁判が開かれます。
特に強盗致傷や強盗致死などの重大事件の場合、一般市民が審理に参加する「裁判員裁判」の対象となります。
裁判員裁判では、被害の重大性や社会的な影響が重視されるため、一般感覚に即した厳しい判決が出る傾向にあります。
第2章:罪名ごとの量刑相場(詐欺・窃盗・強盗)
「闇バイト」と一口に言っても、具体的な役割や犯行内容によって適用される法律は異なります。
しかし、いずれも重罪です。
2-1. 特殊詐欺の「受け子」「出し子」の場合
オレオレ詐欺などで現金を受け取ったり、ATMから引き出したりする役目です。
- 適用罪名:詐欺罪(刑法246条)または窃盗罪(刑法235条)
- 法定刑:10年以下の拘禁刑(懲役)
- 量刑相場: 初犯であっても、被害額が数百万円に及ぶ場合や、組織的な背景がある場合は、懲役2年〜4年程度の実刑判決となる可能性が高いです。執行猶予が付くのは、被害額が少なく、全額弁償ができているような例外的なケースに限られます。
2-2. 「タタキ(強盗)」の実行役の場合
住宅に侵入し、住人を脅して金品を奪う行為です。近年の闇バイトで急増している類型です。
- 適用罪名:住居侵入罪 + 強盗罪(刑法236条)
- 法定刑:5年以上の有期拘禁刑(懲役)
- 量刑相場: 強盗罪には罰金刑がなく、最低でも5年の拘禁刑(懲役)です。減刑されない限り執行猶予(3年以下の拘禁刑、懲役につくもの)は法的に不可能です。したがって、原則として実刑(刑務所行き)となります。
2-3. 被害者に怪我をさせた場合(強盗致傷罪)
強盗の際に、相手を殴ったり、縛ったりして怪我をさせた場合です。
- 適用罪名:強盗致傷罪(刑法240条)
- 法定刑:無期拘禁刑(懲役) または 6年以上の有期拘禁刑(懲役)
- 量刑相場: 非常に重い罪です。被害者が軽傷であっても、懲役6年〜9年程度の実刑判決が一般的です。組織的かつ計画的な犯行であれば、さらに重くなります。
2-4. 被害者が死亡した場合(強盗致死罪)
犯行の結果、被害者が亡くなった場合です。
- 適用罪名:強盗致死罪(刑法240条)
- 法定刑:死刑 または 無期拘禁刑(懲役)
- 量刑相場: 有期懲役の規定がありません。情状酌量による減軽がない限り、無期懲役か死刑の二択となります。
第3章:実際の判決傾向|「指示されただけ」は通じるか
闇バイトの実行役は、「指示役に逆らえなかった」「使い捨ての駒にされた」と主張することが多いですが、裁判所はこれをどう判断しているのでしょうか。
3-1. 共同正犯としての責任
法律上、実行役は「共同正犯」として扱われます。
たとえ首謀者が別にいて、自分は指示通りに動いただけだとしても、犯行の重要な部分(実行行為)を担った以上、首謀者と同等の責任を負うのが原則です。
「報酬をもらう約束をしていた」「役割分担をして犯行に及んだ」という事実は、共犯関係を強く推認させます。
3-2. 「脅されていた」という事情の評価
「家族に危害を加えると脅されていたから断れなかった」という主張は、量刑を決める上での「情状」として考慮される余地はあります。 しかし、それによって無罪になる可能性は極めて低いです。
裁判所は、「警察に相談する機会はあったはずだ」「犯罪に加担して他人を傷つける結果を回避する義務があった」と判断する傾向にあります。
恐怖による犯行であったとしても、被害者の受けた損害(生命・身体・財産)が消えるわけではないため、大幅な減刑は困難です。
3-3. 実際の判決例(闇バイト実行役)
近年の裁判例では、末端の実行役に対しても厳しい判断が下されています。
- 強盗致死・いわゆる「ルフィ」関連事件の実行役: 指示役の命令で住宅を襲撃し、住人を死亡させたケース。 判決:無期懲役 (理由:指示役の指示にただ従っていたわけではなく、一連の事件において果たした役割は相当大きい)
- 強盗致傷関連事件の実行役:金品を奪い取る目的で住居に侵入し、被害者の顔面等を多数回殴り、身体を蹴り、左右の手指を1本ずつ反対方向に折り曲げるなどの暴行を加えたケース。判決:懲役16年(被告人が犯行時21歳と若く、自ら警察に出頭したことを考慮しても、この量刑)
このように、「闇バイト=捨て駒」であるにもかかわらず、非常に重い刑罰が下されることとなります。
第4章:弁護士ができる弁護活動
闇バイトを行ってしまった場合に、弁護士ができる弁護活動について解説します。
4-1. 自首の同行とサポート
まだ逮捕されていない段階、あるいは余罪がある場合、「自首」を検討します。
法律上、自首は「刑を減軽することができる」事由です(刑法42条)。
弁護士が警察署に同行し、捜査に協力する姿勢を示すことで、逮捕の回避(在宅捜査)や、起訴後の量刑における減軽を目指します。
4-2. 被害弁償と示談交渉
窃盗や詐欺、強盗事件において、最も重要な情状事実は「被害回復」です。
被害金額を弁済し、示談を成立させることができれば、量刑が軽くなる可能性があります。
強盗致傷などの重罪では、示談だけで執行猶予が付くことは難しいですが、懲役の年数を短縮するためには不可欠です。
被疑者本人や家族が被害者と接触することは禁じられているため、弁護士が代理人として交渉を行います。
4-3. 捜査協力による情状主張
組織犯罪の場合、指示役や首謀者の検挙に繋がる情報を提供すること(捜査協力)は、反省の表れとして評価される可能性があります。
報復の恐れがある中で真実を供述することは勇気が必要ですが、情報提供と本人の更生意欲を訴え、求刑の軽減を求めます。
4-4. 「恐怖による支配」の立証
「脅されて断れなかった」という事情を、客観的な証拠(脅迫メッセージの履歴、家族への接触状況など)に基づいて立証します。
単なる言い訳ではなく、犯行に至る経緯において「意思決定の自由が著しく制限されていた」ことを裁判官に説得的に主張し、責任の程度を限定するよう求めます。
第5章:早期相談の重要性
闇バイト事件は、時間が経てば経つほど状況が悪化します。
5-1. 「まだやっていない」ならすぐに相談を
もし、闇バイトに応募してしまい、「個人情報を握られて抜け出せない」と悩んでいる段階であれば、犯罪を実行する前に弁護士や警察に相談してください。
実行前であれば、罪に問われない、あるいは未遂・予備罪として軽く済む可能性があります。
弁護士が警察と連携し、身の安全を確保する方法を模索します。
5-2. 逮捕直後の初動が命運を分ける
逮捕された場合、最初の取調べでの供述調書が裁判での決定的な証拠となります。
「言われるがままにサインをした」「自分に不利な内容を認めてしまった」という事態を防ぐため、逮捕直後(勾留決定前)に弁護士と接見し、取調べへの対応方針(黙秘権の行使など)を決める必要があります。
おわりに
闇バイトによる犯罪は、社会的に厳しく指弾されており、量刑相場も年々重くなっています。
「知らなかった」「脅された」という弁解だけで、刑務所行きを回避することはできません。
ご自身やご家族が闇バイトに関与してしまった場合は、一刻も早く弁護士にご相談ください。
刑事弁護についてはこちらから
弊所の弁護士へのご相談等はこちらから