配信者・YouTuber・VTuberの炎上トラブルと法的リスク|弁護士が解説

目次

はじめに

YouTuber、VTuber、TikToker、ストリーマー——ネット上の「配信者」が直面する法的リスクは年々深刻化しています。
SNSでの不用意な一言が数千万円の損害賠償につながったり、「ドッキリ企画」のつもりが逮捕・有罪判決に至ったりするケースは、もはや珍しくありません。

本稿では、近年実際に起きた炎上・法的トラブルの類型を、弁護士の視点から体系的に整理し、関連する法律と実務上の注意点を解説します。
配信者ご本人はもちろん、インフルエンサーを起用する企業の担当者や、トラブルに巻き込まれた一般の方にもお役立ていただける内容です。

なお、本稿は法的リスクの類型解説を目的としており、特定の事件や個人を論評する趣旨ではありません。
紹介する事例は、すでに報道・公的記録等で広く知られているものを素材としていますが、関係者の名誉・プライバシーに配慮し、個人名・団体名等は記載せず、事実関係も抽象化しています。

1. SNS上の不適切発言がもたらす法的リスク

たった1回の投稿で活動休止に追い込まれる

SNS上の不用意な発言は、削除しても手遅れであることが多いです。
スクリーンショットが瞬時に拡散し、「デジタルタトゥー」として半永久的に残り続けます。

近年の事例では、ある人気タレント が、別のタレントの前向きな投稿に対して不適切な内容を引用リポストし、即座に削除したものの、スクリーンショットが拡散。
レギュラー番組の休止、CMの非公開化、最終的には芸能活動の休止にまで追い込まれたケースがあります。
本人は「誤操作で投稿した」と釈明しましたが、釈明内容にも批判が殺到し、炎上がさらに拡大する悪循環に陥りました。

また、登録者数の多いYouTuber がライブ配信で特定の社会的立場にある人々に対する不適切な発言を行い、当初は「あくまで個人の意見」と開き直ったものの批判が収まらず、謝罪と撤回を繰り返した事例もあります。
省庁が異例の公式声明を出す事態にまで発展し、CM中止や活動休止を余儀なくされました。

法的に問題となりうるポイント

SNS上の発言に関連しうる主な法的リスクは以下のとおりです。

名誉毀損罪(刑法230条) は、公然と事実を摘示して他人の名誉を毀損した場合に成立します。法定刑は3年以下の拘禁刑または50万円以下の罰金です。ここでいう「事実」は、真実かどうかを問いません。

侮辱罪(刑法231条) は、2022年の法改正で厳罰化され、1年以下の拘禁刑、30万円以下の罰金、または拘留もしくは科料に引き上げられました。名誉毀損罪と異なり、事実の摘示がなくても成立する点がポイントです。

民事上の損害賠償(民法709条・710条) として、精神的苦痛に対する慰謝料、活動への支障に対する逸失利益、弁護士費用等が請求されることがあります。

加えて、スポンサーとの契約においてSNS上の言動が解除事由に該当するケースも多く、CM・広告契約の損害賠償 という経済的リスクも見逃せません。

実務上の注意点

SNSでの発言リスクを最小化するためには、以下の点を意識することが重要です。

まず、投稿前の一呼吸 です。感情的な状態での投稿は炎上のリスクが極めて高く、特に「引用リポスト」や「リプライ」は攻撃的に受け取られやすい形式です。

次に、裏アカウント・サブアカウントのリスク です。複数アカウントを使い分けている場合、誤爆(意図しないアカウントでの投稿)のリスクが常につきまといます。

さらに、「辛口キャラ」は不適切発言の免罪符にならない という点です。
普段の発言スタイルにかかわらず、特定の属性や立場の人々を傷つける発言は社会的・法的責任を問われます。

2. ライブ配信中の失言・ハラスメント

リアルタイムだからこそ取り返しがつかない

ライブ配信の最大のリスクは、発言を編集・削除できない点にあります。
視聴者が即座にスクリーンショットや録画を行い、問題のある箇所だけが切り抜かれて拡散されます。

近年の事例としては、VTuber同士のオンラインゲーム企画 において、当事者間では「おふざけ」の認識だった行為が、悪意ある切り抜きや不正確な翻訳を通じて海外のSNS・動画プラットフォームで拡散し、国際的な炎上に発展したケースがあります。
結果として、海外メーカーのプロモーション案件の辞退にまで追い込まれました。

また、eスポーツ大会中に海外選手に対して不適切な発言 を行ったストリーマーの事例では、所属チームが公式に謝罪する事態となりました。
競技中の興奮状態であっても、差別的発言が許容されるわけではありません。

法的に注意すべき点

ライブ配信中の発言であっても、録画・アーカイブが残るため証拠としての価値が非常に高いことを忘れてはなりません。

また、ハラスメントに該当する言動については、セクシュアル・ハラスメントパワー・ハラスメント として、損害賠償請求の対象となりえます。
ゲーム内のロールプレイであっても、相手方の同意なく行われた場合や、視聴者が不快に感じる内容であれば、社会的制裁(炎上)のみならず法的責任を問われるリスクがあります。

さらに、切り抜き動画・翻訳による文脈の歪曲 は、海外ファンが多い配信者にとって特に深刻なリスクです。
日本語の微妙なニュアンスが翻訳によって失われ、意図と異なる形で受け取られる可能性は常にあります。

3. ステルスマーケティング規制と広告案件のリスク

2023年10月施行のステマ規制——措置命令が急増

2023年10月1日、改正景品表示法に基づくステルスマーケティング規制が施行されました。
この規制により、「一般消費者が事業者の表示であることを判別することが困難である表示」は不当表示として禁止されています。

施行後わずか1年余りで、大手企業を含む複数の事業者に措置命令が出されています。
たとえば、来院者にGoogleマップの高評価投稿を条件にサービス費用を割引した医療機関の事例は、ステマ規制に基づく初の措置命令として注目を集めました。

そのほかにも、インフルエンサーに報酬を支払いSNS投稿を依頼しておきながら、その投稿を「ユーザーの口コミ」として自社サイトにPR表記なく転載した大手企業や、モニター募集サイトを通じた商品無償提供と引き換えにSNS投稿を依頼しながら広告表記を付さなかった製薬企業など、措置命令は業種を問わず広がっています。

配信者が注意すべきポイント

ステマ規制は、法律上の責任は広告主(事業者)側に課されます。
しかし、配信者にとっても以下のリスクがあります。

第一に、社会的信用の失墜 です。PR表記なしの案件が発覚した場合、「ステマをした配信者」として視聴者の信頼を失失う可能性があります。

第二に、企業案件のPR表記が不十分なケースです。YouTubeの「有料プロモーション設定」やInstagramの「タイアップ投稿ラベル」を使用していても、動画の冒頭で口頭説明がなかったり、PR表記が視聴者に見えにくい位置にある場合は、規制上不十分とされる可能性があります。

第三に、虚偽の広告内容に加担するリスクです。過去には、配信者が企業案件で商品の効果について虚偽の宣伝を行ったケースで、メーカーから数億円規模の損害賠償が命じられた事例もあります。配信者が「自分は紹介しただけ」と思っていても、法的責任が及びうることを示す重要な先例です。

対策としては、案件を引き受ける際に「PR表記の方法」を広告主と事前に確認し、動画の冒頭・説明欄の両方で関係性を明示することなどがあります。
「プロモーションを含みます」とだけ書いても、複数の商品をレビューする動画の中で一部だけが案件の場合、どれが広告なのか消費者に判別できなければ不十分となりえます。

4. ゲーム配信と著作権——逮捕事例も

ゲーム実況=著作権侵害のリスクがある

ゲームの映像は「映画の著作物」(著作権法2条3項)に該当し、ゲーム会社(著作権者)の許可なく配信することは、公衆送信権侵害(著作権法23条)にあたります。
著作権法違反の法定刑は、10年以下の拘禁刑もしくは1,000万円以下の罰金、またはその併科 です(著作権法119条1項)。

多くのゲーム会社が配信ガイドラインを公開し、一定の条件のもとでゲーム実況を許容していますが、これはあくまで「権利者の好意」であり、ガイドラインの範囲を超えれば違法です。

ゲーム実況による逮捕事例

実際に、ゲーム実況による著作権法違反で逮捕者が出た事例があります。
配信者がガイドラインで明示的に配信が禁止されていたにもかかわらず、ストーリー性の高いゲームのエンディングを含むプレイ動画を動画プラットフォームにアップロードし、広告収益を得ていたものです。
権利者側の告発により刑事事件化されました。

ガイドライン違反で問題になりやすいパターン

実務上、特にリスクが高いのは以下のケースです。

発売前のコンテンツの配信は、多くのガイドラインで明示的に禁止されています。公表権(著作権法18条)の侵害にもなりえます。

ストーリーの結末・重大なネタバレを含む配信は、ゲーム会社が最も嫌うパターンです。「エンディングまでの配信禁止」「ストーリーの○章以降は配信禁止」といった制限が設けられていることが多く、前述の逮捕事例もこのパターンに該当します。

BGM・挿入歌の著作権も見落としがちなリスクです。ゲーム内の音楽はゲーム会社とは別の権利者(作曲家、レコード会社等)が権利を持っていることがあり、ゲーム実況が許可されていても、BGMの利用には別途JASRAC等の許諾が必要な場合があります。

ゲーム会社等から許諾を得るパターン

近年では、上述したリスクや企業のレピュテーションリスクなども考慮して、ゲーム会社等と事務所がゲーム実況に関して包括的な許諾契約を締結することも増えてきています。

5. プライバシー侵害——VTuber「中の人」暴露の判例

裁判所が認めた「中の人」のプライバシー権

VTuberの「中の人」(演者)の個人情報を暴露する行為について、裁判所がプライバシー侵害を認定した重要な判例があります。

ある裁判例では、インターネット掲示板上にVTuberの演者の本名と概ねの年齢が投稿された事案について、裁判所は、ネット上で本名や年齢をあえて公開せずにハンドルネーム等を用いて活動する者にとって、これらの情報は一般に公開を望まない私生活上の事柄であるとして、プライバシー侵害を認めました。

注目すべきは、演者が過去に別の媒体で年齢が公開されたことがあった点です。
裁判所は、過去に一度公開されたことがあっても、現時点でのプライバシー侵害は否定されないとしました。

別の裁判例では、過去に本人がSNSで公開していた顔写真を、VTuberとしてのアイデンティティと紐づける形でファン向けの掲示板に投稿した行為について、やはりプライバシー侵害が認定されています。
裁判所は、VTuberとしてのキャラクターのイメージを守るために実際の顔や個人情報を秘匿するという芸能戦略は正当であるとの判断を示しました。

注意すべき個人情報流出経路

配信者自身の個人情報が流出するリスクとして、実務上見落としがちな経路がいくつかあります。

配信中の画面映り込みは、最も身近なリスクです。郵便物の宛先、通知のポップアップ、窓の景色から住所が特定されるケースがあります。実際に、配信中に私的な通信アプリの通知が画面に映り込んだことが原因で、プライベートの情報が発覚し、大きなトラブルに発展した事例が複数報告されています。

広告関連サービスの設定やECサイトの登録情報から、アカウント作成者の本名が表示される仕様に変更されたケースがあり、ここから本名が判明する事例が報告されています。

グッズの自家発送では、自宅や近隣のコンビニから発送した場合、配送伝票から住所が特定されるリスクがあります。

6. 暴露系配信と名誉毀損——有罪判決の教訓

暴露は「正義」でも犯罪になる

近年、暴露系の配信活動を行っていた人物が刑事裁判で有罪判決を受けた事例がいくつかあります。

ある暴露系配信者の事例では、芸能人のプライベート情報を暴露する配信を行い、暴力行為等処罰法違反(常習的脅迫)、名誉毀損、威力業務妨害 等の罪に問われました。
裁判所は執行猶予付きの懲役刑を言い渡し、自らを安全圏に置いて被害者に誹謗中傷の波を浴びせた犯行は悪質であると厳しく批判しました。

また、「アウトロー系」を標榜するインフルエンサーの関係者が逮捕された事例もあり、「正義」や「告発」を名目にした配信であっても、手法が違法であれば摘発される可能性があります。

名誉毀損罪の要件と「公益性」

名誉毀損罪(刑法230条)は、暴露した内容が真実であっても成立します
ただし、以下の3要件をすべて満たす場合には違法性が阻却されます(刑法230条の2)。

  • 公共の利害に関する事実であること
  • 公益を図る目的であること
  • 真実であること(または真実と信じたことにつき相当な理由があること)

暴露系配信の多くは、芸能人の私的なトラブルや恋愛関係など、公共の利害とは直接関係のない情報を扱っており、上記の免責要件を充足しないケースがほとんどです。

さらに、上記の事例で注目すべきは、配信収益を得ていたことが「常習性」の認定根拠になった 点です。
暴露でお金を稼ぐ構造そのものが、犯行の悪質性を基礎づける事情とされました。

7. 迷惑系動画・飲食店テロの法的責任

「ドッキリ」で有罪判決

近年、「ドッキリ動画」と称して一般市民を巻き込んだ行為を撮影した配信者が、監禁罪・威力業務妨害罪 で有罪判決を受けた事例が複数あります。

ある事例では、店舗の従業員を虚偽の口実で車内に呼び入れて閉じ込め、その様子を撮影していた配信者に対し、裁判所は執行猶予付きの懲役刑を言い渡しました。
裁判所は、相手の不安や困惑を面白がり、注目を集めて収益を得ることを目的とした身勝手な行為であると非難しています。

こうした事例の中には、同種の迷惑行為で既に前科がありながら再犯に及んだケースもあり、「エンタメ」「ドッキリ」という名目が犯罪行為の免責事由にならないことは明らかです。

そのほかにも、配信中に他の配信者を脅迫したとして逮捕された事例や、公務員の業務を妨害したとして逮捕された事例など、動画配信に絡む刑事事件が近年相次いでいます。

飲食店での迷惑動画——企業に甚大な損害

飲食チェーン店の備え付けの調味料容器や食器に対する迷惑行為を撮影し、その動画がSNSで拡散される「飲食店テロ」も大きな社会問題となりました。

こうした事件では、客足の大幅な減少により運営会社に百億円を超える時価総額の下落をもたらしたケースや、運営会社が行為者に対し数千万円規模の損害賠償を請求した事例が報告されています。

また、飲食店での迷惑行為を撮影してSNSに投稿した者が逮捕されるなど、刑事立件のハードルも下がりつつあります。

想定される法的責任

迷惑動画の撮影・拡散に関連する主な罪名と法的責任は以下のとおりです。

刑事責任としては、器物損壊罪(3年以下の懲役又は30万円以下の罰金)、威力業務妨害罪(3年以下の懲役又は50万円以下の罰金)、建造物侵入罪(迷惑行為を目的とした入店)、監禁罪(相手を閉じ込めた場合)などが考えられます。

民事責任としては、設備交換・消毒費用、営業損害(客足減少分)、広報・メディア対応費用等の損害賠償が請求されます。

加えて、顔写真や実名が特定された場合のデジタルタトゥーのリスクがあります。
一度ネット上に拡散された個人情報は事実上削除不可能であり、就職・結婚等の人生の各場面で不利益を被り続けるおそれがあります。

8. VTuber事務所と演者の契約トラブル

機密漏洩による契約解除事例

VTuber業界では、事務所と演者の間の契約トラブルが増加しています。
特に、機密情報の漏洩は即時の契約解除事由となる典型的なケースです。

大手VTuber事務所がこれまでに公表した契約解除の事例では、解除理由として「機密情報の第三者への漏洩」「契約上の秘密保持義務違反」等が挙げられることが多くみられます。
また、複数種類の契約違反行為が累積した結果、契約解除に至ったとされるケースもあります。

もっとも、これらはいずれも事務所側の発表に基づく情報であり、演者側の認識や反論が公になっていないケースも少なくない点には留意が必要です。
契約解除の当否は最終的には法的手続の中で判断されるべき問題であり、一方当事者の発表のみをもって事実関係を断定することはできません。

いずれにせよ、配信者として活動するにあたっては、事務所との契約における秘密保持条項の内容を正確に把握し、収益配分や内部方針等の機密情報の取扱いに十分注意することが重要です。

「卒業ラッシュ」に見る労働環境の課題

近年、大手VTuber事務所で「卒業ラッシュ」と呼ばれる現象が話題になっています。
多数のVTuberが「方向性の違い」「体調不良」を理由に活動を終了する事例が相次いでおり、業界全体の労働環境に対する関心が高まっています。

法的な観点からは、VTuberと事務所の契約が業務委託契約なのか雇用契約なのかによって、労働時間規制や安全配慮義務の適用の有無が変わってきます。
形式的には業務委託であっても、実態として事務所の指揮命令下にある場合は、労働基準法上の「労働者」と認定される可能性があり、過重労働に対する事務所の責任が問われうる問題です。

契約紛争のSNS公開が招くリスク

事務所と演者の間で紛争が生じた場合に、演者がSNS上で事務所への不満を表明し、これに対して事務所が公式に反論するという形で、紛争が公開の場で展開されるケースも見られます。

こうした事態が生じると、ファンコミュニティを巻き込んだ激しい対立に発展し、不買運動や他の所属タレントへの攻撃にまで及ぶリスクがあります。
事務所・演者のいずれにとっても、契約上の守秘義務条項の存在と遵守が重要であり、紛争が生じた場合は法的手続(調停・仲裁・訴訟)を通じた解決を検討すべきです。

9. 配信者の税務リスク——億単位の申告漏れ事例

税務署はSNSを監視している

報道によれば、首都圏在住の複数の美容系インフルエンサーが国税局の税務調査を受け、合計で億単位の申告漏れを指摘された事例があります。
企業案件によるPR報酬の一部を申告していなかったり、確定申告自体を行っていなかった年があったりしたとされています。

また、別の事例では、SNSで豪華な生活ぶりを頻繁に投稿していたインフルエンサーが、架空の経費計上による脱税で逮捕・起訴されたケースもあります。

配信者の税務で注意すべき点

配信者は以下の点について特に注意が必要です。

確定申告の義務について、個人で配信活動を行っている場合、年間所得が基礎控除額を超えれば確定申告が必要です。会社員が副業として配信を行っている場合でも、配信による所得が20万円を超えれば確定申告が必要となります。

企業案件報酬の把握については、企業や広告代理店から支払われる報酬は支払調書で把握されるため、配信者側で申告しなくても税務署は収入を把握できます。

SNS投稿が調査の端緒になる点について、税務調査官がSNSを日常的にチェックしていることは業界では広く知られています。高級品の購入報告、海外旅行、派手な生活ぶりの投稿は、申告所得との乖離が疑われる材料となります。

悪質な場合の加重処分として、意図的な所得隠しや虚偽申告が認定された場合は重加算税が課され、さらに悪質であれば逮捕・起訴の可能性もあります。

詳細は税理士にご確認ください。

10. 荒らし・ストーカー被害から身を守るには

配信者が「被害者」になるリスク

配信者は「加害者」になりうるだけでなく、「被害者」にもなります。

YouTubeライブ配信のコメント欄に対する大量の荒らし投稿や、執拗なプライベート情報の詮索により、活動を休止・終了せざるをえなくなったVTuberの事例が複数報告されています。
運営会社が発信者情報開示請求により加害者を特定し、法的対応を行ったケースもあります。

また、配信者の住所が特定され、ストーカーや住居侵入といった物理的な被害に発展した事例も存在します。
VTuberであってもアバターの向こう側には生身の人間がおり、物理的な安全の確保は最も重要な課題です。

被害を受けた場合の法的対応

荒らしやストーカー行為に対しては、以下のような法的手段が考えられます。

発信者情報開示請求(情報流通プラットフォーム対処法)により、匿名の加害者の氏名・住所を特定できます。2022年の法改正により、従来は2段階だった開示手続が1回の裁判手続で完了する「発信者情報開示命令」制度が導入され、迅速な対応が可能になりました。

損害賠償請求(民法709条)として、精神的苦痛に対する慰謝料のほか、活動休止による逸失利益の請求が認められる可能性があります。

ストーカー規制法に基づく警告・禁止命令も有効な手段です。特定の配信者に対する執着的な行動が「つきまとい等」に該当すれば、警察による介入を求めることができます。

11. 炎上後の謝罪対応で差がつく

初動対応の3原則

炎上が発生した場合、その後の対応によって被害の拡大を防げるか、あるいは取り返しのつかない事態に発展するかが大きく分かれます。
実際の事例から見えてくる初動対応の原則は以下の3点です。

第1に、迅速さです。問題を認識してから時間が経つほど、憶測や批判が膨れ上がります。

第2に、言い訳をしないことです。過去の事例では、「個人の意見だから」という弁解や「誤操作だった」「本来の意図とは別の意図として伝わった」という釈明がかえって炎上を拡大させたケースが複数あります。言い訳は「本心で思っていたことが漏れた」「きちんと反省をしていない」と受け取られやすく、逆効果になりがちです。

第3に、具体的な改善策の提示です。抽象的な「反省しています」だけでは不十分であり、再発防止のための具体的な行動を示すことが求められます。

やってはいけない対応

過去の事例から、明らかに状況を悪化させた対応パターンがいくつか確認できます。

謝罪の撤回・二転三転責任転嫁や言い訳(「誤操作だった」「身内ノリだった」「本来の意図ではない」等)、問題の矮小化(「大した問題ではない」という態度)、沈黙を続けてからの遅すぎる対応 ——これらはいずれも炎上を拡大させる典型的なパターンといえます。

法的な観点では、謝罪の仕方によっては責任の自認と受け取られ、後の訴訟で不利に働く可能性もあります。
炎上が法的紛争に発展する可能性がある場合は、公開の謝罪を行う前に弁護士に相談することを強く推奨します。

12. まとめ——配信者が知っておくべき法的チェックリスト

本記事で取り上げた事例から、配信者が日常的に意識すべき法的チェックポイントを整理すると、以下のようになります。

日常の発信に関するチェック

  • SNSへの投稿前に、第三者の視点で内容を確認しているか
  • 特定の属性や立場の人々を傷つける表現が含まれていないか
  • 裏アカウントとの誤操作リスクを管理しているか

広告・案件に関するチェック

  • PR表記は適切に行っているか(動画冒頭での口頭説明+説明欄+プラットフォーム機能)
  • 広告内容に虚偽はないか
  • 案件の契約内容を書面で確認しているか

著作権に関するチェック

  • ゲーム配信ガイドラインをタイトルごとに確認しているか
  • BGMに著作権フリーの素材を使用しているか
  • ネタバレ・エンディング配信のリスクを理解しているか

プライバシーに関するチェック

  • 配信画面に個人情報が映り込んでいないか
  • 広告関連サービスやECサイトの設定で本名が表示されていないか
  • グッズ発送で住所が特定されない方法を取っているか

税務に関するチェック

  • 企業案件を含むすべての収入を正確に把握しているか
  • 確定申告を適切に行っているか
  • 経費計上に不自然な点はないか

被害対策に関するチェック

  • 荒らしやストーカー被害が生じた場合の相談先(弁護士・警察)を把握しているか
  • 発信者情報開示請求の手続を理解しているか
  • 自身の安全確保策(住所非公開、匿名配送等)を講じているか

おわりに

配信者・インフルエンサーを取り巻く法的リスクは、業界の発展とともに急速に複雑化しています。
ステマ規制の施行と措置命令の急増、ゲーム実況での逮捕事例、迷惑動画への有罪判決——いずれも「知らなかった」では済まされない問題ばかりです。

トラブルが発生してからでは取り返しがつかないケースも多いため、日頃からの予防と、万が一の際の迅速な法的対応が重要です。

※ 本記事は一般的な法的情報の提供を目的としたものであり、特定の事件に関する法的判断や助言を行うものではありません。法改正や新たな判例により、記載内容が変更される可能性があります。個別のケースについては、弁護士にご相談ください。

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この記事を書いた人

髙田法律事務所の弁護士。東京弁護士会所属 登録番号60427
インターネットの誹謗中傷や離婚、債権回収、刑事事件やその他、様々な事件の解決に携わっている。
最新のビジネスや法改正等についても日々研究を重ねている。

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