セックスレスで離婚できる?慰謝料請求の条件と証拠の集め方

目次

【この記事の結論・要約】

  • セックスレスは「婚姻を継続し難い重大な事由」として、法定離婚事由(離婚できる正当な理由)になり得ます。
  • 相手が正当な理由なく性交渉を拒否し続けている場合、慰謝料(相場は50万〜200万円程度)の請求が可能です。
  • 裁判や交渉で有利に進めるためには、日記や音声、LINE、医師の診断書など、長期間の拒絶を証明する客観的な証拠が不可欠です。

はじめに

近年、夫婦の形が多様化する中で、「セックスレス」は深刻な悩みとして増加しています。
厚生労働省の調査や各種統計でも、多くの夫婦が性生活の欠如に直面していることが示唆されています。

セックスレスは、夫婦間の問題の中でも非常にセンシティブな問題であり、人には相談しにくい悩みです。
法的に見れば、夫婦には「同居・協力・扶助」の義務があり、性交渉もその重要な要素の一部と考えられています。
本記事では、セックスレスで離婚するための条件慰謝料請求のポイント、そして何より重要となる証拠の集め方について解説します。

第1章:セックスレスで離婚は認められるのか?

1-1. 法律が定める「離婚できる理由」

日本の民法第770条第1項では、裁判で離婚が認められるための5つの事由(法定離婚事由)を定めています。
セックスレスは、このうちの5番目にあたる「婚姻を継続し難い重大な事由」に該当する可能性があります。

(裁判上の離婚)
第七百七十条 夫婦の一方は、次に掲げる場合に限り、離婚の訴えを提起することができる。
一 配偶者に不貞な行為があったとき。
二 配偶者から悪意で遺棄されたとき。
三 配偶者の生死が三年以上明らかでないとき。
四 配偶者が強度の精神病にかかり、回復の見込みがないとき。
五 その他婚姻を継続し難い重大な事由があるとき。

夫婦の性生活は、円満な婚姻関係を維持するための重要な基盤の一つです。
そのため、一方が求めているにもかかわらず、もう一方が正当な理由なく性交渉を拒絶し、それによって関係が修復不可能なほど破綻している場合、法的に離婚が認められるケースがあります。
例えば、以下のようなケースで離婚が認められています。

  • 長期間性交渉がなく、改善の余地がなかった場合(岡山地裁津山支部 平成3年3月29日判決、福岡高判平5年3月18日等)
  • 性的不能であり、長期間性交渉がなかった場合(京都地判昭和62年5月12日、最判昭和37年2月6日等)

1-2. 「性格の不一致」との違い

単に「最近回数が減った」という程度では、単なる性格の不一致や価値観の違いとみなされることが多いです。
法的手段としての離婚が認められるためには、以下の要素が重要視されます。

  • 期間: 一般的に1年以上、全く交渉がない状態が続いている。
  • 拒絶の意思: 一方が改善を試みたが、相手が明確に拒否し続けている。
  • 婚姻関係の破綻: セックスレスが原因で会話がなくなる、別居に至るなど、関係が壊れている。

1-3. 離婚が認められにくいケース

一方で、以下のような「正当な理由」がある場合は、セックスレスだけを理由に離婚を認めることは難しくなります。

  • 高齢や病気、怪我によって身体的に困難な場合。
  • 仕事の多忙による一時的な疲労。
  • 出産前後などの生理的な要因。
  • 夫婦双方の合意のもとでセックスレスである場合。

第2章:セックスレスによる慰謝料請求の条件と相場

2-1. 慰謝料が発生する「性交渉拒否」とは

セックスレスで慰謝料が発生するのは、相手に「不法行為」としての責任が認められる場合に限られます。
具体的には、相手が健康であるにもかかわらず、あなたの求めを一方的に拒み続け、精神的な苦痛を与えた場合です。

夫婦には性的に協力する義務があると考えられており、これを怠ることで、不法行為が成立すると判断される場合があります。

2-2. 慰謝料の金額相場

セックスレスを理由とする慰謝料の相場は、一般的に50万円〜200万円程度と言われています。
金額を左右する要因には、以下のようなものがあります。

  • 期間の長さ: レス期間が長いほど高額になる傾向があります。
  • 年齢: 子どもを望んでいる年齢層での拒絶は、精神的苦痛が大きいと判断されます。
  • 不貞行為の有無: 相手が外で性欲を満たしている(不倫している)場合は、増額される可能性があります。
  • 誠実な対応: 改善に向けたカウンセリングを拒むなど、不誠実な態度がある場合。

2-3. 慰謝料請求が困難なパターン

逆に、あなた自身にも非がある場合は請求が難しくなります。
例えば、あなたが暴言を吐く(モラハラ)、家事を一切放棄する、あるいは自身が不倫をしているなどの事情があれば、相手が性交渉を避けるのも「無理はない」と判断されてしまうためです。

第3章:裁判や交渉を有利に運ぶための証拠の集め方

3-1. 日記やメモ(継続的な記録)

重要なのが「毎日の記録」です。
単に「今日もしなかった」と書くのではなく、以下の内容を詳細に残してください。

  • 日付と時間: いつ誘ったのか。
  • 誘い方: どのような言葉や態度で求めたのか。
  • 相手の反応: 「疲れている」「気分じゃない」「寝たい」など、具体的な拒絶文句。
  • 自分の感情: それによってどれだけ傷ついたか。

デジタル(スマホのメモアプリ)でも良いですが、後から改ざんできない「手書きのノート」や、SNS(自分宛のLINEなど)への投稿記録は証拠能力が高まります。

3-2. LINEやメールの履歴

相手とのやり取りの中に、セックスレスを裏付ける言葉が残っていれば有力な証拠になります。

  • 例1: 「もう何ヶ月も避けているけど、どうして?」という問いかけに対し、「今はする気になれない」といった返信。
  • 例2: 相談を持ちかけたのに既読スルーされる、あるいは「その話はしたくない」と打ち切られる様子。

これらのスクリーンショットを保存しておきましょう。

3-3. 録音・録画データ

話し合いの場を設けた際の録音は、相手の本音を引き出す手段として有効です。
「性交渉がない事実」を相手が認めている音声があれば、相手が後から裁判で「いや、月1回はしていた」と嘘をつくことを防げます。

注意点: 無断録音であっても、夫婦間の話し合いであれば証拠として認められるケースが多いですが、脅迫的な聞き方は避けてください。

3-4. 医師の診断書やカウンセリング記録

セックスレスが原因で、あなたが精神的に不安定になり通院した場合、その記録は「精神的苦痛の証明」になります。

  • 心療内科: 抑鬱状態や不眠の診断。
  • 不妊治療クリニック: 「協力が得られず治療が進まない」という医師の所見。
  • 夫婦カウンセリング: 改善のために努力したという履歴。

3-5. 「ないこと」を証明する難しさ

セックスレスであるという事実自体が争われるケースは多くはありません(ほとんどは、「婚姻関係が破綻しているか」という評価が争われます。)。
しかし、実際に争われることになった場合、「セックスをしていない」という事実(不在の証明)は、法律上非常に証明が難しいものです。
そのため、証拠は一つに絞らず、「日記+LINE+録音」のように組み合わせることで、真実味を持たせることが肝要です。

第4章:離婚を検討する際の具体的な進め方

4-1. まずは夫婦間の話し合い(協議離婚)

いきなり裁判をすることはできません。
まずは話し合い(協議)をすることが多いです。
この段階で、相手がセックスレスを認め、離婚や慰謝料に合意すれば合意書や公正証書を作成して終了です。

4-2. 離婚調停の活用

話し合いがまとまらない場合でも、いきなり裁判をすることはできません(調停前置主義)。
この場合、まずは、家庭裁判所での「調停」を利用します。
調停委員という第三者を介して話し合いますが、ここでも収集した証拠を提示することで、調停委員を味方につけることができます。

4-3. 離婚裁判

調停でも決着がつかない場合に、初めて裁判となります。
裁判では「客観的な証拠」がすべてです。
第3章で挙げた証拠を積み上げ、婚姻関係が破綻していることを主張します。

第5章:セックスレス問題を弁護士に相談するメリット

5-1. 適切な「証拠の質」を判断してもらえる

どのような証拠が裁判で通用するのか、専門家の視点でアドバイスを受けられます。
自分では「これは使えない」と思っていたメールが、実は決定打になることもあります。

5-2. 相手との直接交渉を任せられる

セックスレスという極めてデリケートな問題を、本人同士で議論すると感情的になりがちです。
弁護士が代理人となることで、冷静かつ法的なロジックで交渉を進めることができます。

おわりに

セックスレスは、単なる体の相性の問題ではなく、あなたの人生と尊厳に関わる重大な問題です。
「性交渉がないだけで離婚なんて……」と自分を責める必要はありません。

法的な準備(証拠集め)をしっかり行うことで、新しい人生への一歩を踏み出す権利を手にできます。
もし今、一人で悩まれているのであれば、まずは弁護士へ相談ください。

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この記事を書いた人

髙田法律事務所の弁護士。東京弁護士会所属 登録番号60427
インターネットの誹謗中傷や離婚、債権回収、刑事事件やその他、様々な事件の解決に携わっている。
最新のビジネスや法改正等についても日々研究を重ねている。

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