Googleの口コミを削除する方法|削除依頼の手順と弁護士に依頼すべきケース

目次

はじめに

「身に覚えのないクレームを書かれた」 「ライバル店から嫌がらせのような低評価を付けられた」 「従業員の個人名を出して誹謗中傷された」

現在、Googleマップ上の口コミ(Googleレビュー)は、飲食店や美容室などの店舗ビジネスだけでなく、病院・クリニック、一般企業に至るまで、集客や採用に直結する極めて重要な情報源となっています。
多くのユーザーが、Google検索で表示される「星の数(評価点)」や「口コミの内容」を見て、その店に行くか、その会社の商品を買うかを判断しているからです。

そのため、事実無根の書き込み悪意ある「星1」のみの低評価誹謗中傷を含む口コミが投稿されることは、単なる嫌がらせでは済まされず、深刻な営業妨害であり、企業の存続に関わる風評被害といえます。

「Googleの口コミは削除できない」と諦めているオーナー様も多いかもしれません。
確かに、Googleは表現の自由や情報の透明性を重視しており、単に「気に入らないから」という理由での削除は認められません。
しかし、Googleの定めた「ポリシー」に違反している場合や、日本の法律上の「権利侵害(名誉毀損など)」に該当する場合には、適切な手順を踏むことで削除できる可能性があります。

本稿では、Googleの口コミによって被害を受けている店舗や企業のオーナー様、担当者様に向けて、Googleへの削除依頼の方法(削除申請の手順)、Googleが定める削除基準、そして自力で削除されない場合に検討すべき弁護士による法的手段(仮処分発信者情報開示など)について、法的な観点から解説します。

悪質な口コミが事業活動に及ぼす影響

ネガティブな口コミの放置は、事業運営において以下のような実害をもたらす可能性があります。

1-1. 売上・集客への直接的なダメージ

消費者庁や民間の調査によると、初めて利用する店やサービスを選ぶ際、8割以上の人が「口コミ・レビューを確認する」と回答しています。
特に飲食店クリニックなど、失敗したくないという心理が働く業種では、Googleマップの評価が3.5を下回ると、検索順位(MEO)が下がるだけでなく、ユーザーからの選択肢から外れる可能性が劇的に高まります。
「受付の態度が最悪」「料理に異物が入っていた」といった具体的な(しかし虚偽の)エピソードが書かれていると、それを見た見込み客は来店を取りやめ、機会損失が拡大し続けます。

1-2. 採用活動への悪影響

求職者もまた、応募先の企業の評判をGoogleマップで検索します。
「パワハラが横行している」「残業代が出ない」といった会社の内情に関するネガティブな書き込みがあると、優秀な人材の応募が激減したり、内定辞退が増加したりします。
採用コストの高騰や人手不足の原因が、実はGoogleの口コミにあったというケースは珍しくありません。

1-3. 従業員のモチベーション低下と離職

名誉毀損レベルの個人攻撃や、理不尽なクレームが公開され続けることは、現場で働く従業員の心を深く傷つけます。
店舗や会社が従業員を守る姿勢(削除に向けた行動)を示さなければ、「この会社は守ってくれない」という不信感に繋がり、離職の引き金になりかねません。

Googleの削除基準(禁止および制限されているコンテンツ)

Googleへの削除依頼を行うにあたっては、当該口コミがGoogleの定める「ポリシー」に違反していることを指摘する必要があります。
主な違反項目は以下の通りです。

2-1. 虚偽のコンテンツ・なりすまし

  • 実体験に基づいていない投稿: 実際には来店していないのに書かれた口コミや、他人の体験をさも自分の体験のように書く行為。
  • なりすまし: 競合他社が一般客を装って低評価をつける行為などが該当します。

2-2. 関連性のないコンテンツ

  • その場所での体験とは無関係な政治的な主張、個人的な不満の吐露、一般的な社会批判などは削除対象となります。

2-3. 利害に関する問題(利益相反)

  • 競合他社による投稿: ライバル店をおとしめる目的での投稿。
  • 自分自身による投稿: オーナーや従業員が、自作自演で高評価をつける行為も禁止されています。

2-4. ハラスメント・いじめ・差別表現

  • 特定の個人(従業員や他の客)を攻撃したり、人種・宗教・性別などに基づく差別的な表現を含んだりする投稿は、厳しく規制されています。

2-5. 個人情報

  • 個人の氏名、顔写真(承諾なし)、電話番号、メールアドレスなどが含まれている場合、プライバシー侵害として削除対象となります。

Googleへの削除依頼(報告)の手順

Googleのポリシー違反に該当する場合、オーナー自身がGoogleに対して削除をリクエストすることができます。

3-1. Googleビジネスプロフィール(旧マイビジネス)からの申請

店舗や会社のオーナー確認が済んでいる場合、管理画面から報告するのが最もスムーズです。

  1. Googleビジネスプロフィールにログインする。
  2. 「クチコミ」を選択し、削除したい口コミを探す。
  3. 口コミの横にある「︙(三点リーダー)」メニューをクリックし、「不適切なクチコミとして報告」を選択する。
  4. 違反していると思われるポリシーのカテゴリ(例:「スパムと虚偽のコンテンツ」「ハラスメント」など)を選択して送信する。

3-2. Googleマップからの申請(一般ユーザーとしての報告)

オーナー権限がない場合や、第三者が報告する場合は、Googleマップ上から行います。

  1. Googleマップで対象の施設を表示し、口コミ欄を開く。
  2. 削除したい口コミの「︙」をクリックし、「違反コンテンツを報告」を選択。
  3. 理由を選択して送信する。
  4. 3-3. 削除リクエストを使用する

【注意点】 これらの「報告」は、あくまでGoogleのAIや担当者がポリシーに照らして判断を仰ぐものです。そのため、明白なスパムや著作権侵害以外は、この方法では「削除されない」ことが多いのが実情です。

法的根拠に基づく削除請求(弁護士による対応)

Googleの報告フォームからの申請で削除されなかった場合、法的措置を検討します。
ここではGoogleのポリシーではなく、日本の法律に基づき「違法性(権利侵害)」を主張します。
なお、この手続きは専門性が高いため、弁護士にご依頼される方が良いでしょう。

4-1. 迷惑防止措置請求

情報流通プラットフォーム対処法(旧:プロバイダ責任制限法)に基づき、Googleに対して「この口コミは権利侵害にあたるため、送信(掲載)を止めてほしい」と法的な書面で申し入れる手続きです。
ここでは、単に「嘘だから消して」と言うのではなく、どの法律のどの権利を侵害しているかを論理的に構成する必要があります。
ただし、Googleはこの手続きに対応することはあまり多くないないため、後述する仮処分手続きもあわせて検討すべきです。

4-2. 削除の根拠となる主な法的権利

  • 名誉毀損(めいよきそん): 口コミの内容が、①公然と事実を摘示し、②人の社会的評価を低下させるものであり、③その内容が真実ではない(または真実と信じる正当な理由がない)場合に成立します。 (例:「この病院は無資格医が手術をしている」「賞味期限切れの肉を出している」など、具体的な事実かつ社会的信用を落とす嘘)
  • 名誉感情の侵害(侮辱): 事実の摘示がなくても、表現があまりに汚く、相手の人格を否定するような罵詈雑言である場合。 (例:「店員の顔がキモい」「バカ」「死ね」などの暴言)
  • プライバシー侵害: 従業員のフルネームや自宅住所、病歴などの私的な情報を公開された場合。
  • 営業権の侵害(営業妨害): 虚偽の事実によって業務を妨害された場合。

4-3. 仮処分命令の申立て

任意の交渉(送信防止措置請求)でもGoogleが応じない場合、(あるいは、早急に対応する必要がある場合には最初から)裁判所に対して「仮処分」の申立てを行います。
これは通常の裁判(訴訟)よりも迅速に進む手続きで、裁判官が「違法である」と認めれば、Googleに対して削除を命じる「決定」が出されます。
Googleは、裁判所の決定には原則として従うため、仮処分が認められれば、ほぼ確実に口コミは削除されます。
申立てから削除までの期間は、早ければ1〜2ヶ月程度です。

投稿者の特定と責任追及(発信者情報開示請求)

悪質な口コミの場合、単に削除するだけでは不十分なことがあります。
「誰が書いたのか特定して、二度とさせたくない」「損害賠償を請求したい」と考える場合、削除と並行して「発信者情報開示請求」を行います。

※発信者情報開示請求の全体的な流れについては以下のコラムもご覧ください。

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5-1. 特定までの流れ

  1. Googleへの開示請求(IPアドレスの取得): 裁判所の手続き(仮処分や発信者情報開示命令)を通じて、Googleから投稿者の「IPアドレス」と「タイムスタンプ」の開示を受けます。
  2. プロバイダへの開示請求(契約者情報の取得): IPアドレスから判明した通信会社(ドコモ、KDDI、ソフトバンクなど)に対して、その時間に接続していた契約者の氏名・住所・電話番号などの開示を求める裁判手続きを申し立てます。

現在は、発信者情報開示命令、提供命令の手続きが創設されたため、上記の開示手続きを一つの手続きで行うことも多くなっています。
発信者情報開示請求は時間との戦いでもあるため、早急に裁判手続きの申し立てを行う必要があります。

5-2. 特定後にできること

  • 損害賠償請求(慰謝料請求): 特定した投稿者に対し、売上減少分(ハードルは高い)や慰謝料、特定にかかった弁護士費用などの損害賠償を請求します。
  • 刑事告訴: 名誉毀損罪や侮辱罪、信用毀損罪、偽計業務妨害罪などで警察に告訴し、刑事罰(罰金や拘禁刑)を求めます。
  • 示談交渉: 訴訟を起こさず、謝罪と二度と書き込まない旨の誓約書、示談金の支払いで解決することもあります。

※刑事告訴には時間的な制約(公訴時効・告訴期間)があります。詳しくは以下のコラムをご覧ください。

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削除が困難なケースと留意事項

全てのネガティブな口コミが削除できるわけではありません。法的な削除要件を満たさないケースが存在します。

6-1. 「星1」のみの評価(コメントなし)

コメントがなく、星の数だけの低評価は、原則として削除が非常に困難です。
「星1」は「私はこの店が気に入らなかった」という主観的な評価の表明に過ぎず、具体的な事実の摘示がないため、名誉毀損には当たらないとされる可能性が高いためです。
ただし、短期間に大量の星1がつけられるなど、明らかに組織的なスパム行為や営業妨害の意図が見える場合は、例外的にGoogleのポリシー違反として削除される可能性があります。

6-2. 「個人の感想」や「主観的な評価」

「料理が美味しくなかった」「店員の愛想が悪かった」「待ち時間が長く感じた」といった内容は、あくまで個人の主観的な感想(意見論評)であり、それがどんなに厳しい意見であっても、表現の自由として守られる傾向にあります。
ただし、「不味すぎて吐いた」「店員に暴言を吐かれた」など、感想の域を超えて虚偽の事実を含んでいる場合は、争う余地があります。

6-3. 「事実」である場合(公共の利害)

書かれた内容がマイナスなことであっても、それが「真実」であり、かつ「公共の利害」に関わり(例:医療ミスがあった、産地偽装があった等の告発)、投稿の目的が専ら公益を図ることにある(他の利用者の利益のために投稿するなど)場合は、違法性が阻却され、削除できません。

不適切な対応によるリスク

焦るあまり、以下のような行動をとると、かえって事態が悪化したり、新たなトラブルを招いたりします。

7-1. 口コミに対して感情的に反論する

口コミの返信機能を使って、投稿者と喧嘩をしてはいけません。
「お前こそ客としての態度が悪かった」「特定してやる」などと感情的に書き込むと、それを見た他のユーザーに「この店はオーナーが怖い」「反省していない」という最悪の印象を与えます。
返信をするなら、事実無根であっても一旦は「不快な思いをさせて申し訳ない」という大人の対応を見せつつ、「事実確認をしたいのでご連絡ください」と誘導するなど、冷静な対応をする方が良いでしょう。

7-2. 削除代行業者(非弁業者)に依頼する

ネット上には「成果報酬で削除します」と謳う削除代行業者が存在しますが、これらに依頼するのは非常に危険です。
報酬を得て削除交渉などの法律事務を行うことは、弁護士法72条で禁止されている「非弁行為」という犯罪です。
業者が行う方法は、違法な手段であったり、Googleにスパム認定されるような方法であったりすることが多く、最悪の場合、Googleから店舗のアカウント自体を停止(垢BAN)されるリスクがあります。
合法的に、かつ安全に削除できるのは、本人か弁護士だけです。

弁護士に依頼するメリット

Google口コミの削除は、専門的な知識とノウハウが必要です。
弁護士に依頼する主なメリットは以下の通りです。

  1. 成功率の向上: どの法律構成(名誉毀損、プライバシー侵害など)を使えば削除できるか、法的知識に基づいて的確に主張できます。
  2. 根本的解決: 投稿者の特定や損害賠償請求まで一貫して任せることができ、再発防止につながります。
  3. 本業への専念: 慣れない申告作業や法的手続きの手間から解放され、オーナーは経営に専念できます。

おわりに

Googleマップ上の口コミは事業の信用に関わる重要な要素です。ポリシー違反や権利侵害に該当する悪質な投稿については、放置せず、適切な措置を講じることが重要です。

まずはGoogleへの報告を行い、それでも解決しない場合や、法的な権利侵害が疑われる場合は、弁護士による削除請求や発信者情報開示請求を検討すべきです。
誹謗中傷や営業妨害にお困りの際は、インターネット問題に精通した弁護士にご相談ください。

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この記事を書いた人

髙田法律事務所の弁護士。
インターネットの誹謗中傷や離婚、債権回収、刑事事件やその他、様々な事件の解決に携わっている。
最新のビジネスや法改正等についても日々研究を重ねている。

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