はじめに
実際に何か犯罪行為をしてしまったか否かにかかわらず、ある日突然逮捕されてしまう可能性があります。
人は神様ではないので、実際にどのような出来事があったのかについて、証拠等もなしに知ることはできません。
犯罪行為は何もしていないのに、急に逮捕されてしまうことがあるかもしれません。
逮捕されると、非常に動揺してしまいます。私はまだ逮捕されたことはありませんが、仮に自分が逮捕されたとしても、おそらくかなり動揺します。
しかも、動揺してしまった冷静ではない状況の中で、色々な手続が進んでいきます。
今回は、何か犯罪行為をしてしまったか否かにかかわらず、逮捕された場合に備えて、逮捕された後の手続の流れについて解説いたします。
逮捕から検察官送致まで
警察に逮捕されると、直ちに警察署の留置場に身柄を置かれ、取調べが始まります。
この間、ご家族であっても自由に面会することは困難で、連絡も基本的には取れません。
被疑者(逮捕された人)は、弁護士に限り、いつでも誰の立会いもなく面会する権利(接見交通権)が保障されています。
取調べでは、警察官が事件について質問し、その応答を「供述調書」という書面にまとめます。
この調書は後の裁判で極めて重要な証拠となるため、内容をよく確認し、もし自分の話したことと違う点が書かれていれば、訂正を求めなければなりません。
調書には署名指印を求められますが、弁護士と面会をして方針を決めるまでは、調書にはサインをしない方が良いです。
裁判所は、供述調書の内容をそのまま採用してしまうことが多いため、一度サインした調書の内容を覆すのはかなり難しいです。
また、被疑者には、言いたくないことを無理に話す必要のない「黙秘権」も保障されています。
警察は、逮捕から48時間以内に、この供述調書などの捜査書類とともに、被疑者の身柄を検察庁へ送らなければなりません。これを「送致(送検)」といいます。
検察官による取調べと勾留請求
送致を受けた検察官は、自らも被疑者から話を聞き、24時間以内に、引き続き身柄を拘束する必要があるかどうかを判断します。
そして、検察官が「被疑者が証拠を隠滅したり、逃亡したりする恐れがある」と判断した場合は、裁判官に対して「勾留」を請求します。
なお、検察での取調べでも供述調書が作成されます。
書面の内容が正確であるかの確認や、署名指印するか否かの判断が重要であることは、警察官の作成する供述調書のところで述べたのと同様です。
勾留期間
勾留期間(最大20日間)
検察官から勾留請求を受けた裁判官は、被疑者と面談(勾留質問)した上で、勾留を認めるか否かを決定します。
裁判官が勾令状を発付すると、被疑者は原則として10日間、引き続き警察署の留置場で身柄を拘束され続けます。
この間、検察官は起訴するかどうかを決めるため、さらに捜査を進めます。
また、捜査が続いているなどの理由でやむを得ないと判断された場合、勾留はさらに最大10日間延長されることがあります。
つまり、逮捕されてから最大で23日間、社会から隔離された状態で過ごさなければならない可能性があります。
この勾留決定に対しては、「準抗告」という不服申立てを行うことも可能です。
終局処分
検察官は、この最大20日間の勾留期間が終わるまでに、事件を刑事裁判にかける「起訴」とするか、裁判にはかけずに事件を終了させる「不起訴」とするかを最終的に決定します
不起訴となれば、その時点で身柄は解放され、前科がつくこともありません。
事件はそこで終了となります。
不起訴にはいくつかの種類がありますが、最も多いのが「起訴猶予」です。
これは、犯罪の疑いは十分あるものの、事件の軽重、被害者との示談の成立、本人の反省の度合いなどを考慮して、検察官の裁量で起訴を見送るというものです。
被害者がいる事件では、この期間内に示談を成立させることが、不起訴処分を得るために極めて重要となります。
その他にも、不起訴の中には、犯罪の証拠が不十分であるという「嫌疑不十分」や、犯罪の嫌疑がない「嫌疑なし」などがあります。
起訴されると、被疑者は「被告人」という立場に変わり、約1か月後に開かれる刑事裁判を受けることになります。
起訴には、公開の法廷で審理される「公判請求」と、書面審理のみで罰金刑が科される「略式請求」があります。
日本の刑事裁判の有罪率は99%以上と極めて高く、起訴されてしまうと、無罪を勝ち取るのは非常に困難です。
そのため、起訴・不起訴が決まる前の捜査段階での活動は重要です。
おわりに
以上が、逮捕されてからその後の処分が決まるまでのおおまかな流れです。
あくまでもよくあるパターンの一例というだけで、事案によっては手続の内容や期間が変わることもあります。
逮捕されると、パニックになってしまい、警察官の言われるがままに調書にサインをしてしまいその後、ある程度時間が経って(勾留期間中は暇になる時間もあり、その際に冷静になってくることも多い)気が付いても取り返しがつかない、というパターンをよく目にします。
逮捕直後に冷静になれというのも難しい話ではあるのですが、私見としては、弁護士と打ち合わせをして方針を決めるまでは調書にサインをしない、ということを覚えておくだけでも良いのではないかと思います。