転職会議・OpenWorkの口コミを削除する方法|企業が取るべき法的対応と投稿者特定の手順

目次

【この記事の結論・要約】

  1. 転職サイトの悪質な口コミは、企業の社会的評価を低下させる場合、削除請求が可能です。
  2. サイトのフォームからの申請で削除されない場合、裁判所の「仮処分」手続きを利用します。
  3. 投稿者を特定し、損害賠償請求を行うためには、ログ保存期間(約3ヶ月)内の迅速な対応が必要です。

はじめに

「転職会議」や「OpenWork」といった転職・就職口コミサイトは、求職者にとって企業の内部事情を知るための重要な情報源となっています。
一方で、企業側にとっては、退職者による感情的な書き込みや、事実無根の誹謗中傷、機密情報の漏洩などが掲載されるリスクがあり、採用活動に深刻な悪影響を及ぼすケースが後を絶ちません。

「ブラック企業であると書かれ、応募が激減した」 「特定の管理職の実名を挙げてハラスメント加害者扱いされた」 「事実と異なる労働条件が書き込まれている」

これらの口コミは、放置すれば企業のブランドイメージを毀損し、優秀な人材の確保を困難にします。
しかし、これらのサイトは「労働者の知る権利」や「表現の自由」を掲げており、企業側からの任意の削除依頼には容易に応じない傾向があります。

本稿では、転職会議やOpenWorkにおける悪質な口コミ被害に悩む企業の担当者様や経営者様に向けて、サイトごとの削除依頼の方法、削除が認められる法的な基準、そして裁判所を通じた削除命令や投稿者特定(発信者情報開示請求)の手順について、解説します。

第1章:転職サイトの口コミが企業に与える影響

1-1. 高い閲覧数とSEOの強さ

転職会議やOpenWorkは、会員数が数百万人に及ぶ巨大プラットフォームです。
「企業名」や「企業名 評判」で検索すると、検索結果の上位にこれらのサイトが表示されることが多く、求職者はほぼ確実にこれらの口コミを目にします。
ここにネガティブな情報が掲載されていることは、採用活動において致命的な障壁となります。

1-2. 退職者による「復讐」の側面

投稿者の多くは、会社に不満を持って退職した元従業員や、選考に落ちた求職者です。
そのため、内容は主観的かつ批判的なものになりやすく、時には私怨による虚偽の事実や、過剰な表現が含まれることがあります。
社内の人間しか知り得ない情報が含まれている場合、閲覧者はその内容を「真実」として受け取りやすいため、被害が拡大しやすい傾向にあります。

第2章:削除が認められる「権利侵害」の基準

サイト側に削除を求めるためには、単に「批判的で不快だ」という理由だけでは不十分です。
法律上の「権利侵害」や、各サイトの「ガイドライン違反」に該当することを主張する必要があります。

2-1. 名誉毀損

最も一般的な削除根拠です。 以下の3つの要件を満たす場合、名誉毀損が成立します。

  1. 公然性:不特定多数が閲覧できる状態であること(転職サイトはこれに該当します)。
  2. 事実の摘示:具体的な事柄を挙げていること(例:「残業代が支払われていない」「社長が横領している」など)。
  3. 社会的評価の低下:その書き込みによって、企業の信用や評価が下がること。

※ただし、その内容が「真実」であり、「公共性」、「公益性」がある場合は、違法性が阻却され、削除できない可能性があります(真実性の抗弁)。

2-2. プライバシー侵害

役員ではない一般従業員の氏名や、個人の私生活に関する情報が書き込まれている場合、プライバシー侵害として削除対象となります。
「〇〇部長」などの役職名であっても、文脈から個人が特定でき、受忍限度を超える中傷がなされている場合は削除される可能性があります。

2-3. 各サイトのガイドライン違反

  • 転職会議: 「個人を特定できる情報」「虚偽の内容」「誹謗中傷」などを禁止しています。
  • OpenWork: 「事実と異なる内容」「個人を特定する情報」「誹謗中傷」などを禁止しています。

第3章:サイト別・削除依頼フォームからの申請方法

まずは、各サイトが用意している削除依頼フォーム(問い合わせフォーム)を通じて、削除を申請します。

3-1. 転職会議の削除依頼

転職会議の削除手続きは特殊です。

  1. ホームページ下部にある「ヘルプ」を開き、チャットボットから「問い合わせフォーム」のリンクを出してもらいます。
  2. 「問い合わせフォーム」に必要事項を入力し、送信防止措置依頼書のウェブフォームのURLを送ってもらいます。
  3. ウェブフォームのURLにアクセスし、必要事項や「侵害された権利」などを記入し、送信ボタンを押します。
  4. ページを印刷し、証拠とともに、メールに添付して送信します。

転職会議の場合、削除されたとしても、口コミ全体が削除されるのではなく、該当箇所だけアスタリスク(*のマーク)の表示に変えるという対応となる場合が多いです。

3-2. OpenWorkの削除依頼

OpenWorkは、問い合わせフォームから削除依頼を受け付けています。

  1. 「お問合せ 掲載情報の削除依頼」ページ(https://www.openwork.jp/contact5.php)にアクセスします。
  2. 中央部にある「申請方法」に従い、送信防止措置依頼書その他の書類を揃えて、記載されているメールアドレスに添付して送信します。

3-3. フォーム申請の限界

これらのフォームからの申請は、コストがかからない反面、成功率は高くありません。
これらの方法を試しても削除されない場合、次章以降の法的手続きを検討する必要があります。

第4章:削除されない場合の「弁護士による削除請求」

フォームからの申請が却下された場合、弁護士による法的手続きへ移行します。

4-1. 送信防止措置請求(情報流通プラットフォーム対処法)

弁護士名義で、サイト運営会社(株式会社リブセンス、オープンワーク株式会社など)に対し、「送信防止措置依頼書」を内容証明郵便などで送付します。
法的な権利侵害を詳細に説明する書面を送ることで、運営側が違法性を再考し、任意での削除に応じる場合があります。

4-2. 裁判所を通じた「削除仮処分」

任意の削除に応じない場合、裁判所に対して「削除仮処分命令」を申し立てます。
これは通常の訴訟(裁判)よりも迅速な手続きで、裁判官が「記事は違法である」と認定すれば、サイト運営会社に対して削除を命じる決定を出します。
国内のサイト運営会社であれば、裁判所の決定には原則として従うため、仮処分が認められれば、削除される可能性は高いといえます。

  • 期間:申立てから1〜2ヶ月程度。
  • 担保金:手続きに際し、法務局に担保金(30万〜50万円程度)を供託する必要があります(手続き終了後に返還されます)。

第5章:投稿者を特定する「発信者情報開示請求」

「削除するだけでは同様の投稿が繰り返されるおそれがある」「損害賠償を請求したい」という場合、投稿者を特定する手続きを行います。

5-1. ステップ1:サイト運営者へのIPアドレス開示請求

まず、転職会議やOpenWorkに対し、投稿時の「IPアドレス」「タイムスタンプ」の開示を求めます。
サイト側は、投稿者の氏名や住所を保有していないため、まずは通信の痕跡であるIPアドレスを取得する必要があります。
これらのサイトは、IPアドレス等だけでなく、投稿者の氏名や住所、電話番号などの情報を有している可能性もあるため、発信者情報開示命令の手続きを用います。

5-2. ステップ2:通信事業者(プロバイダ)への契約者情報開示請求

IPアドレスから判明した通信事業者(携帯キャリアやISP)に対し、発信者情報開示命令の申し立てを行い、その時間に接続していた契約者の氏名・住所などの開示を求めます。

5-3. ログ保存期間のタイムリミット

投稿者の特定において、最大の壁となるのが「ログの保存期間」です。 通信事業者がアクセスログを保存している期間は、一般的に約3ヶ月〜6ヶ月程度です。
口コミが投稿されてから時間が経過している場合、ログが消去されており、技術的に特定が不可能となるリスクがあります。
そのため、被害を発見した際は、直ちに弁護士へ相談し、手続きに着手する必要があります。

第6章:特定後の責任追及と企業防衛

投稿者が元従業員や関係者であると特定された場合、以下のうちどのような対応をとるか検討します。

6-1. 民事上の損害賠償請求

特定した投稿者に対し、以下の損害賠償を請求します。

  • 慰謝料:名誉毀損による無形損害。
  • 営業損害:売上減少や採用コストの増大など(立証のハードルは高いです)。
  • 調査費用:特定に要した弁護士費用の一部。

6-2. 刑事告訴

内容が悪質な場合(虚偽の事実による業務妨害、深刻な名誉毀損など)、警察に刑事告訴を行い、処罰(名誉毀損罪、信用毀損罪、偽計業務妨害罪など)を求めます。

6-3. 社内処分と再発防止

投稿者が在職中の従業員であった場合、就業規則に基づき、懲戒処分を検討します。
また、入社時や退職時に「秘密保持誓約書(NDA)」を取り交わす、SNS利用に関するガイドラインを策定するなど、再発防止に向けた社内体制の整備も重要です。

第7章:企業が弁護士に依頼するメリット

企業の評判に関わる問題は、スピードと正確性が命です。
弁護士に依頼することで、以下のメリットが得られます。

7-1. 法的構成の組み立て

どの記述がどの権利を侵害しているかを法的に構成し、裁判所を説得する書面を作成します。
また、どのような証拠を準備する必要があるのかなどについてもアドバイスをすることが可能です。

7-2. スピード対応

仮処分や開示請求は、手続きの遅れが致命的になります。
弁護士はタイムリミットを意識し、適切なスケジュールで手続きを進めます。

7-3. 経営判断へのアドバイス

削除や特定などの法的手続きを行うことのメリットやデメリットの提示、費用対効果は見合うかなど、企業のレピュテーションリスク(評判リスク)を考慮した総合的なアドバイスを提供します。

おわりに

転職会議やOpenWorkのネガティブな口コミは、企業の採用力やブランドイメージを大きく損なう要因となります。
「匿名だから仕方がない」「退職者の愚痴だ」と放置せず、法的に対処可能なものについては、削除や特定といった毅然とした措置を講じることが、企業を守るために重要です。

特に、投稿者の特定には時間制限があります。
悪質な書き込みを発見された企業の担当者様は、早期の段階で、企業法務やインターネット問題に精通した弁護士にご相談ください。

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この記事を書いた人

髙田法律事務所の弁護士。東京弁護士会所属 登録番号60427
インターネットの誹謗中傷や離婚、債権回収、刑事事件やその他、様々な事件の解決に携わっている。
最新のビジネスや法改正等についても日々研究を重ねている。

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