盗撮で逮捕されたら|撮影罪の成立要件と弁護士による示談交渉

目次

はじめに

盗撮事件は、スマートフォンの普及に伴い年々増加傾向にあります。
駅のエスカレーターや電車内、商業施設のトイレなど、日常生活のあらゆる場面で発生しうる犯罪です。
もし盗撮で逮捕されてしまった場合、ご本人やご家族は「前科がつくのか」「会社にバレるのか」など多くの不安を抱えることでしょう。

2023年7月13日には「性的姿態撮影等処罰法」が施行され、「撮影罪(性的姿態等撮影罪)」が新設されました。
これにより従来の迷惑防止条例よりも厳しい刑罰が科される可能性が生じています。
本稿では、盗撮で逮捕された場合に成立する犯罪、逮捕後の流れ、示談交渉の重要性について解説いたします。

1. 盗撮で成立する犯罪とは

盗撮行為は、その態様や撮影場所、撮影が行われた時期によって適用される法律が異なります。
2023年7月13日以降の盗撮行為には新設された「撮影罪」が原則として適用され、それ以前の行為には従来どおり「迷惑防止条例違反」等が適用されます。
また、撮影場所や態様によっては「建造物侵入罪」や「軽犯罪法違反」が併せて適用されることもあります。
どの犯罪が成立するかによって刑罰の重さが大きく変わるため、まずは各犯罪の内容を理解しておくことが重要です。

1-1. 撮影罪(性的姿態等撮影罪)

2023年7月13日に施行された「性的な姿態を撮影する行為等の処罰及び押収物に記録された性的な姿態の影像に係る電磁的記録の消去等に関する法律」(通称:性的姿態撮影等処罰法)により、撮影罪が新設されました。
これは全国一律に適用される法律であり、従来の都道府県ごとに内容が異なる迷惑防止条例とは異なり、日本全国どこで撮影されたかに関わらず同じ基準で処罰されることになります。

撮影罪の対象となる「性的姿態等」については、第2条1項1号に規定があり、具体的には以下を指します。

第二条 次の各号のいずれかに掲げる行為をした者は、三年以下の拘禁刑又は三百万円以下の罰金に処する。
一 正当な理由がないのに、ひそかに、次に掲げる姿態等(以下「性的姿態等」という。)のうち、人が通常衣服を着けている場所において不特定又は多数の者の目に触れることを認識しながら自ら露出し又はとっているものを除いたもの(以下「対象性的姿態等」という。)を撮影する行為
イ 人の性的な部位(性器若しくは肛こう門若しくはこれらの周辺部、臀でん部又は胸部をいう。以下このイにおいて同じ。)又は人が身に着けている下着(通常衣服で覆われており、かつ、性的な部位を覆うのに用いられるものに限る。)のうち現に性的な部位を直接若しくは間接に覆っている部分
ロ イに掲げるもののほか、わいせつな行為又は性交等(刑法(明治四十年法律第四十五号)第百七十七条第一項に規定する性交等をいう。)がされている間における人の姿態

二 刑法第百七十六条第一項各号に掲げる行為又は事由その他これらに類する行為又は事由により、同意しない意思を形成し、表明し若しくは全うすることが困難な状態にさせ又はその状態にあることに乗じて、人の対象性的姿態等を撮影する行為
三 行為の性質が性的なものではないとの誤信をさせ、若しくは特定の者以外の者が閲覧しないとの誤信をさせ、又はそれらの誤信をしていることに乗じて、人の対象性的姿態等を撮影する行為
四 正当な理由がないのに、十三歳未満の者を対象として、その性的姿態等を撮影し、又は十三歳以上十六歳未満の者を対象として、当該者が生まれた日より五年以上前の日に生まれた者が、その性的姿態等を撮影する行為
2 前項の罪の未遂は、罰する。
3 前二項の規定は、刑法第百七十六条及び第百七十九条第一項の規定の適用を妨げない。

これを大きく3つに分けると、以下のようになります。

①性器・肛門・臀部(お尻)・胸部といった性的な部位
②これらの性的な部位を覆うために着用している下着のうち、現に性的な部位を直接または間接に覆っている部分
③わいせつな行為や性交等がされている間における人の姿態

撮影罪が成立する行為は主に4つのパターンに分類されます。
最も典型的なのは、①正当な理由なくひそかに性的姿態等を撮影する行為です(法第2条1項1号)。
電車内やエスカレーターで女性のスカートの中をスマートフォンで盗撮する行為、トイレや更衣室に小型カメラを設置して撮影する行為などがこれに該当します。
次に、②暴行・脅迫などにより被害者が同意しない意思を形成・表明・全うすることが困難な状態にさせて撮影する行為があります(法第2条1項2号)。
また、③行為の性質が性的なものでないと誤信させたり、特定の者以外が閲覧しないと誤信させたりして撮影する行為も処罰対象です(法第2条1項3号)。
さらに、④正当な理由なく13歳未満の者の性的姿態等を撮影する行為、または13歳以上16歳未満の者を対象に撮影者が5歳以上年長である場合の撮影行為も、本人の同意があっても撮影罪となります(法第2条1項4号)。

撮影罪の法定刑は「3年以下の拘禁刑又は300万円以下の罰金」です。
従来の迷惑防止条例違反と比較すると、懲役刑の上限が1年から3年に、罰金刑の上限が100万円から300万円に大幅に引き上げられており、厳罰化が図られています。
また、撮影の未遂も処罰対象となる点が重要です。
スマートフォンをスカートの下に向けたものの、実際には撮影ボタンを押せなかった場合や、撮影したが画像が保存されていなかった場合でも、撮影罪の未遂として処罰される可能性があります。

1-2. 迷惑防止条例違反

2023年7月12日以前に行われた盗撮行為については、各都道府県が制定する迷惑防止条例により処罰されます。
条例の正式名称は都道府県によって異なり、東京都では「公衆に著しく迷惑をかける暴力的不良行為等の防止に関する条例」と呼ばれています。迷惑防止条例では、公共の場所や公共の乗物において、人の通常衣服で隠されている下着または身体を撮影する行為が禁止されています。

東京都の迷惑防止条例違反の場合、法定刑は「1年以下の懲役又は100万円以下の罰金」です。
常習として行った場合は「2年以下の懲役又は100万円以下の罰金」に加重されます。
撮影罪と比較すると刑罰は軽いですが、罰金刑であっても前科となることに変わりはありません。
初犯の場合、略式起訴により20万円から30万円程度の罰金刑で終わるケースも多いですが、前科がつくことで就職や資格取得に影響が出る可能性があります。

なお、迷惑防止条例は都道府県ごとに内容が異なるため、どの都道府県で撮影されたかによって処罰の範囲や刑罰が変わる場合がありました。
例えば、ある都道府県では処罰対象となる行為が、別の都道府県では処罰対象外となるケースもあり得ました。
撮影罪の新設により、このような地域差の問題は解消されました。

1-3. その他の犯罪(建造物侵入罪・軽犯罪法違反)

盗撮の態様によっては、撮影罪や迷惑防止条例違反に加えて、他の犯罪が同時に成立する場合があります。
複数の犯罪が成立すると、より重い刑罰が科される可能性が高まります。

建造物侵入罪(刑法130条)は、盗撮目的でトイレや更衣室、浴場などに侵入した場合に成立します。
たとえ立ち入り自由な商業施設やスポーツジムであっても、盗撮という犯罪目的での立ち入りは「正当な理由」がないため、不法侵入とみなされます。
建造物侵入罪の法定刑は「3年以下の拘禁刑(懲役)又は10万円以下の罰金」です。
盗撮行為と建造物侵入罪が同時に成立する場合、両方の罪で処罰される可能性があります。

軽犯罪法違反(第1条23号)は、住居・浴場・更衣場・便所など人が通常衣服を着けないでいるような場所をひそかにのぞき見た場合に成立します。
「窃視の罪」とも呼ばれ、法定刑は「拘留又は科料」と比較的軽いですが、迷惑防止条例や撮影罪では規制できない場所での盗撮行為に適用されることがあります。

1-4. 撮影罪に関連する犯罪(提供罪・保管罪・送信罪)

性的姿態撮影等処罰法では、撮影行為だけでなく、撮影された画像・動画の取り扱いについても厳しい処罰規定が設けられています。
盗撮画像をSNSやインターネット掲示板にアップロードしたり、知人に送信したりすると、撮影罪とは別の犯罪が成立します。

性的影像記録提供等罪は、撮影罪により撮影・記録された性的影像記録(盗撮画像・動画)を第三者に提供する行為です。
特定・少数の者(例えば友人数人)に提供した場合「3年以下の拘禁刑又は300万円以下の罰金」不特定・多数の者に提供したり公然と陳列(インターネットへのアップロード等)した場合「5年以下の拘禁刑又は500万円以下の罰金」となります。
そのため、行為態様によっては撮影罪よりも重い刑罰が科される可能性があります。

性的影像記録保管罪は、第三者への提供や公然陳列の目的で性的影像記録を保管する行為です。
法定刑は「2年以下の拘禁刑又は200万円以下の罰金」です。
販売目的でパソコンに盗撮画像を大量に保存していた場合などに適用されます。
また、性的姿態等影像送信罪は、不特定多数の者に性的姿態等の影像をライブ配信する行為であり、「5年以下の拘禁刑又は500万円以下の罰金」という重い刑罰が科されます。

2. 盗撮で逮捕された後の流れ

盗撮事件で逮捕された場合、その後どのような手続きが進むのかを理解しておくことは、適切な対応を取るうえで非常に重要です。
逮捕後の流れを時系列で見ていきましょう。

2-1. 逮捕のパターン(現行犯逮捕と後日逮捕)

盗撮事件の逮捕には、主に「現行犯逮捕」「通常逮捕(後日逮捕)」の2つのパターンがあります。
どちらのパターンで逮捕されるかによって、その後の対応も変わってきます。

現行犯逮捕は、盗撮行為の最中または直後に被害者や周囲の人に発見され、その場で取り押さえられるケースです。
駅のエスカレーターや電車内での盗撮事件の多くはこのパターンで発生します。
現行犯逮捕は逮捕状なしで行うことができ、一般人による逮捕(私人逮捕)も認められています。
被害者本人や目撃者に現認されて取り押さえられ、駆けつけた警察官に引き渡されるというケースが典型的です。

通常逮捕(後日逮捕)は、犯行現場から逃走したものの、後日逮捕されるケースです。
「逃げ切れた」と安心していても、後から逮捕される可能性は十分にあります。
近年は駅構内や商業施設、電車内にも多数の防犯カメラが設置されており、映像の解析によって犯人が特定されることが増えています。
交通系ICカードの利用履歴から乗車駅・降車駅を特定され、身元が判明することもあります。
また、別件で警察にスマホの中身を見られたときに犯行が発覚するケースもあります。
後日、警察官が令状を持って自宅や勤務先に来て逮捕されるということも珍しくありません。

2-2. 逮捕から勾留決定まで(最大72時間)

逮捕されると、まず警察署に連行され、取り調べを受けます。
警察は逮捕から48時間以内に被疑者の身柄を検察庁に送致しなければなりません。
検察官は送致を受けてから24時間以内に、引き続き身柄を拘束する必要があるか(勾留請求をするか)、それとも釈放するかを判断します。
つまり、逮捕から最大72時間(3日間)で勾留するかどうかが決まります。

この72時間は、身柄拘束からの解放を目指すうえで極めて重要な時間帯です。
この間、ご家族であっても原則として面会(接見)することはできません。
しかし、弁護士であれば逮捕直後から時間制限なく接見することが可能です。
弁護士は被疑者と面会し、今後の見通しや取り調べでどのように対応すべきかをアドバイスすることができます。
また、検察官に対して勾留請求をしないよう求める意見書を提出するなど、早期釈放に向けた弁護活動を開始できます。
逮捕されたらできるだけ早く弁護士に連絡することが何より重要です。

2-3. 勾留期間と在宅事件への切り替え

検察官が勾留請求を行い、裁判官がこれを認めると、原則として10日間の勾留となります。
勾留とは、逮捕に引き続いて行われる身柄拘束処分のことです。
捜査上さらに時間が必要な場合は延長が認められ、最長で20日間の勾留が続く可能性があります。
勾留期間中は留置場(警察署内の留置施設)で生活しながら、取り調べを受けることになります。

しかし、盗撮事件では勾留されずに早期に釈放されるケースもあります。
初犯で、定職や家庭があり、住所が安定しており、容疑を素直に認めている場合は、証拠隠滅や逃亡のおそれが低いと判断され、勾留請求がなされなかったり、勾留請求が却下されたりすることがあります。
この場合、逮捕から2~3日程度で釈放され、以後は「在宅事件」として捜査が進められます。
在宅事件となれば、普段通りの生活を送りながら、警察や検察からの呼び出しに応じることになります。

ただし、在宅事件になったからといって無罪放免になったわけではありません。
捜査は継続しており、何も対策を講じなければ、ある日突然検察官から呼び出され、起訴されて罰金刑を言い渡される可能性があります。
罰金刑でも前科となるため、釈放された後こそ弁護士に相談し、被害者との示談交渉など不起訴に向けた活動を進めることが重要です。

2-4. 起訴・不起訴の判断と裁判

勾留期間中または在宅捜査の過程で、検察官は被疑者を起訴するか不起訴にするかを判断します。
不起訴となれば刑事手続きはそこで終了し、前科はつきません。
不起訴には「嫌疑なし」「嫌疑不十分」「起訴猶予」などの種類がありますが、盗撮事件で示談が成立した場合に目指すのは「起訴猶予」です。
起訴猶予とは、犯罪の嫌疑は十分だが、被害者との示談成立や被疑者の反省など諸般の事情を考慮して起訴しないという処分です。

一方、起訴された場合は裁判となります。
日本の刑事裁判の有罪率は99%を超えており、起訴されるとほぼ確実に有罪判決を受けることになります。
起訴には「正式起訴」「略式起訴」があり、略式起訴は100万円以下の罰金刑の場合に本人の同意を得て行われる簡易な手続きです。
略式起訴の場合、公開の法廷で裁判を受けることなく、書面審理のみで罰金刑が言い渡されます。
正式起訴された場合は、公開の法廷で審理が行われ、有罪であれば懲役刑(執行猶予付きを含む)や罰金刑が言い渡されます。

3. 示談交渉の重要性

刑事事件における示談とは、加害者が被害者に対して謝罪し、示談金(慰謝料)を支払うことで、当事者間の紛争を解決する和解のことです。
盗撮事件において、示談が成立するかどうかは、検察官の起訴・不起訴の判断や裁判での量刑に大きな影響を与える極めて重要な要素です。

3-1. 示談成立のメリット

示談が成立することで得られるメリットは複数あります。
最も大きなメリットは、不起訴処分となる可能性が高まることです。
初犯で被害者との示談が成立し、被害者が処罰を望まない意思(宥恕)を示している場合、検察官は「起訴猶予」による不起訴処分とする可能性が高くなります。
不起訴であれば前科はつかず、履歴書の賞罰欄に記載する必要もありません。

また、勾留中に示談が成立すれば、早期釈放が実現する可能性もあります。
示談の成立により、証拠隠滅や被害者への接触のおそれが低下したと判断され、身柄拘束を継続する必要性がなくなるためです。
早期に釈放されれば、会社への影響を最小限に抑えることができます。

たとえ起訴されてしまった場合でも、示談が成立していることは有利な情状として考慮されます。
被害者に対する被害回復がなされていること、被害者の処罰感情が和らいでいることが裁判官に伝わり、実刑ではなく執行猶予付き判決が言い渡される可能性が高まります。
さらに、示談により民事上の損害賠償問題も同時に解決できるため、後日被害者から別途損害賠償請求を受けるリスクも回避できます。

3-2. 盗撮事件の示談金相場

盗撮事件の示談金(慰謝料)の相場は、一般的に10万円から50万円程度で、中心値は約30万円とされています。
ただし、これはあくまで目安であり、具体的な金額は盗撮の態様、被害の程度、被害者の処罰感情、加害者の資力などによって大きく変動します。
法律で金額が決まっているわけではなく、最終的には被害者との交渉によって決まります。

示談金が高額化する傾向があるケースとしては、次のようなものがあります。
トイレや更衣室など特にプライバシー性の高い場所での盗撮は、駅のエスカレーターでの盗撮よりも被害者の精神的苦痛が大きいとされ、示談金が高くなりやすいです。
全裸など露出度の高い姿態の撮影も同様です。
盗撮画像がインターネットに拡散されている場合は、被害者の精神的苦痛が甚大であり、示談金が100万円を超えることも珍しくありません。
被害者が未成年である場合も示談金が高額化する傾向にあります。
常習的に盗撮を繰り返していた場合や、多数の被害者がいる場合も、一人あたりの示談金が高くなることがあります。

3-3. 示談交渉の進め方

盗撮事件の示談交渉は、弁護士への依頼が事実上必須です。
被害者は盗撮という性的な被害を受けており、加害者本人との直接接触を強く拒否するのが通常です。
警察や検察も、被害者保護の観点から加害者本人には被害者の連絡先を教えてくれません。
しかし、弁護士が代理人として間に入る場合は、被害者の同意のもとで連絡先を入手し、示談交渉を進められることが多いです。

示談交渉の具体的な流れは次のとおりです。
まず、弁護士が警察官または検察官を通じて被害者に連絡を取り、示談交渉に応じる意向があるか確認します。
被害者が交渉に応じる場合は、弁護士が被害者の連絡先を入手し、直接連絡を取ります。
弁護士は被害者に対して、加害者の謝罪の意思を伝え、示談金額や示談条件について協議し、合意に至れば示談書を作成して被害者に署名・押印をしてもらいます。
示談金の支払いと示談書の取り交わしが完了すれば、示談成立となります。

示談書には、示談金額や支払方法のほか、いくつかの重要な条項を記載します。
「宥恕条項」は、被害者が加害者を許し刑事処罰を求めない旨を記載するもので、不起訴処分を獲得するうえで非常に重要です。
「清算条項」は、示談金以外に当事者間に債権債務がないことを確認するもので、後日の追加請求を防ぎます。
「守秘義務条項」は、示談の内容を第三者に漏らさないことを約束するものです。

不起訴処分を獲得するためには、検察官が処分を決定する前に示談を成立させる必要があります
身柄事件であれば勾留期間(最長23日間)のうちに、在宅事件であれば起訴されるまでの間に示談をまとめなければなりません。
被害者が示談に応じない場合や、条件面で折り合いがつかない場合もあるため、時間との戦いになります。
早期に弁護士に依頼し、迅速に示談交渉を開始することが極めて重要です。

4. 会社にバレずに解決するために

盗撮で逮捕された方やそのご家族にとって、「会社にバレないか」「懲戒解雇されないか」という不安は非常に大きいものです。
会社に盗撮事件が発覚する主な原因は、長期間の無断欠勤と実名報道の2つです。

4-1. 早期釈放の重要性

逮捕・勾留されると外部との連絡が制限され、自分で会社に電話をかけることができません。
留置場に入る際にスマートフォンなどは取り上げられてしまいます。
家族から会社に連絡を入れてもらうことは可能ですが、理由を説明できなければ不審に思われます。
無断欠勤が何日も続けば、会社は事態の深刻さに気づき、最悪の場合、逮捕の事実が発覚してしまいます。

72時間以内、つまり逮捕から3日以内に釈放されれば、「体調不良で寝込んでいた」「急な家庭の事情があった」などの説明で乗り切れる可能性があります。
そのためには、逮捕直後から弁護士に依頼し、勾留回避に向けた弁護活動を行ってもらうことが不可欠です。
弁護士は検察官に対して勾留請求をしないよう求める意見書を提出したり、勾留決定に対して準抗告を申し立てたりすることで、早期釈放を目指します。

4-2. 実名報道のリスクと対策

実名報道されるかどうかは報道機関の判断によりますが、社会的地位のある人物は報道されやすい傾向があります。
公務員、医師、教師、大企業の従業員や役員、マスコミ関係者などは、一般人よりも報道される可能性が高いです。
実名報道されると、会社に知られるだけでなく、インターネット上に名前が残り続けるため、転職や社会復帰にも大きな支障が出ます。

弁護士に依頼すれば、警察に対して報道機関への情報提供を控えるよう意見書を提出することができます。
法的な拘束力はありませんが、事件の内容や被疑者の反省態度、示談交渉の状況などを考慮して対応してもらえる場合もあります。
また、示談が成立して不起訴処分を獲得できれば、起訴されなかった事件として報道される可能性は大幅に低下します。

4-3. 懲戒処分と解雇について

盗撮が会社に発覚した場合、就業規則に基づいて懲戒処分が検討されます。
懲戒処分には、戒告・けん責、減給、出勤停止、降格、諭旨解雇、懲戒解雇などの種類があります。
どの処分が適用されるかは、盗撮の態様、会社への影響、本人の反省態度、過去の懲戒歴などによって異なります。

ただし、盗撮で逮捕されたからといって必ずしも懲戒解雇されるわけではありません。
懲戒解雇は従業員の人生を大きく左右する最も重い処分であるため、労働契約法により一定の制限がかけられています。
具体的には、懲戒解雇が「客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合」は、権利の濫用として無効となります。
実際に、盗撮で逮捕されたものの示談が成立し不起訴となったケースで、会社が行った懲戒解雇が無効と判断された裁判例もあります。

公務員の場合は注意が必要です。
国家公務員法や地方公務員法により、禁錮以上の刑(執行猶予付き判決を含む)が確定すると失職となります。
撮影罪の法定刑には「3年以下の拘禁刑」が含まれているため、起訴されて有罪判決を受けると、たとえ執行猶予がついても失職するリスクがあります。
公務員の方は特に、不起訴処分の獲得が極めて重要です。

5. 弁護士に依頼するメリット

盗撮事件で弁護士に依頼することには、多くのメリットがあります。
逮捕直後から釈放後、裁判に至るまで、あらゆる段階で専門的なサポートを受けることができます。

第一に、逮捕直後から接見(面会)が可能です。
逮捕後72時間は家族でも面会できませんが、弁護士であれば時間や回数の制限なく被疑者と面会できます。
弁護士は被疑者に対して、今後の手続きの流れや見通し、取り調べでどのように対応すべきかをアドバイスすることが可能です。
また、取り調べで不利な供述調書が作成されないようサポートすることで、その後の処分を有利に導きます。

第二に、早期釈放に向けた弁護活動を行います。
検察官に対して勾留請求をしないよう意見書を提出したり、勾留決定が出た場合には準抗告を申し立てたりすることで、身柄拘束期間の短縮を目指します。
早期に釈放されれば、会社への影響を最小限に抑えることができます。

第三に、被害者との示談交渉を代理で行います。
前述のとおり、示談交渉は弁護士でなければ実質的に行うことができません。
弁護士が被害者の連絡先を入手し、適切な示談金額を提示し、示談書を作成することで、スムーズな示談成立を実現します。
示談が成立すれば不起訴処分の可能性が大幅に高まります。

第四に、検察官に対する不起訴の働きかけを行います。
示談成立の報告に加え、被疑者の反省状況、再犯防止に向けた取り組み(専門クリニックへの通院、再犯防止プログラムへの参加など)、家族による監督体制などを意見書にまとめ、不起訴処分を求めます。

第五に、会社への対応についてもアドバイスを受けられます。
会社にどのように説明するか、懲戒処分を軽減するためにどのような主張をすべきか、不当な処分を受けた場合にどう対応するかなど、社会復帰に向けた総合的なサポートを得ることができます。

おわりに

盗撮で逮捕された場合、2023年7月13日以降の行為であれば撮影罪(性的姿態等撮影罪)が適用され、「3年以下の拘禁刑又は300万円以下の罰金」という従来より重い刑罰が科される可能性があります。
撮影の未遂も処罰対象であり、また撮影した画像の提供・保管・送信なども別途処罰されます。

逮捕後は最大72時間で勾留が決定されますが、盗撮事件では初犯で容疑を認めている場合、早期に釈放され在宅事件となるケースも多くあります。
しかし、在宅事件であっても何も対策を講じなければ起訴されて前科がつきます。不起訴処分を獲得するためには、被害者との示談成立が極めて重要であり、示談交渉は弁護士に依頼しなければ実質的に行うことができません。

会社にバレずに解決するためには、早期釈放と不起訴処分の獲得が鍵となります。
弁護士に依頼することで、逮捕直後からの接見、勾留回避・早期釈放に向けた弁護活動、被害者との示談交渉、不起訴に向けた働きかけなど、あらゆる面で専門的なサポートを受けることができます。

当事務所では、弁護士が、逮捕直後から全力でサポートいたします。
ご家族が逮捕されてしまった場合はもちろん、ご本人様が警察から呼び出しを受けている段階でも、お一人で悩まず、お早めにご相談ください。

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この記事を書いた人

髙田法律事務所の弁護士。
インターネットの誹謗中傷や離婚、債権回収、刑事事件やその他、様々な事件の解決に携わっている。
最新のビジネスや法改正等についても日々研究を重ねている。

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