X(旧Twitter)の誹謗中傷を削除・投稿者特定する方法を弁護士が解説

目次

【この記事の結論】

X(旧Twitter)で誹謗中傷の被害を受けた場合、以下の対処法があります。

  1. 証拠保全を最優先で行う——投稿のスクリーンショット・URL・アカウント情報を保存する
  2. X社への削除依頼——違反報告機能または情報流通プラットフォーム対処法に基づく専用窓口から申請する
  3. 裁判所を通じた削除(仮処分)——X社が任意で応じない場合、裁判所に削除仮処分命令を申し立てる
  4. 発信者情報開示請求による投稿者の特定——匿名の投稿者の氏名・住所を特定し、損害賠償請求や刑事告訴につなげる

いずれの手続きにおいてもスピードが重要です。
プロバイダのログ保存期間(一般的に3~6ヶ月程度)を過ぎると投稿者の特定が技術的に不可能になるため、被害に気づいたら速やかに弁護士に相談することをお勧めします。

はじめに

X(旧Twitter)は「リポスト」機能による拡散力が極めて高く、一度誹謗中傷が投稿されると、短時間で不特定多数の目に触れるリスクがあります。
匿名性の高さから、過激な発言や個人情報の晒し、なりすましなどが横行しやすい傾向にあります。

被害に遭った場合、放置すると記録が残り続け、将来にわたって悪影響を及ぼしかねません。
一方で、対処の順番を誤ると、投稿者の特定や損害賠償請求が困難になることもあります。

本記事では、Xでの誹謗中傷に悩む方に向けて、被害に気づいた直後にやるべきこと、削除依頼の方法、発信者情報開示請求による投稿者の特定、慰謝料請求や刑事告訴までの一連の流れを解説します。

誹謗中傷に気づいたらまずやるべきこと

証拠を保全する

誹謗中傷の投稿を発見したら、何よりも先に証拠を保全してください。
投稿者がアカウントを削除したり、ツイート(ポスト)を消したりすると、証拠が失われてしまいます。

保存すべき情報は以下のとおりです。

  • 投稿のURL(パーマリンク): ツイートごとの固有URLです。
  • スクリーンショット: 投稿内容、投稿日時、アカウント名(表示名)、ユーザーID(@から始まる英数字)が全て写るように撮影します。プロフィール画面も保存してください。
  • 撮影はPCからの保存を推奨: スマートフォンではURLが完全に表示されないことがあるため、PCのブラウザ画面での保存が確実です。
  • ウェブ魚拓の取得: ウェブ魚拓サービスを利用してページを保存しておくという方法もあります。

弁護士に早期相談する(ログ保存期間のタイムリミット)

証拠保全ができたら、速やかにインターネット問題に詳しい弁護士に相談してください。

投稿者の特定に不可欠な通信ログ(誰がいつどのIPアドレスを使ったかの記録)は、アクセスプロバイダ(携帯電話会社・インターネット回線業者等)によって保存されていますが、その保存期間は一般的に3ヶ月~6ヶ月程度と非常に短いです。
この期間を過ぎるとログが消去され、技術的に投稿者の特定が不可能になります。

弁護士に相談すれば、タイムリミットを意識して手続きを進めるとともに、プロバイダに対して「ログを消去しないでほしい」というログ保存要請を先行して行うことも可能です。

「先に削除依頼」は慎重に

直感的には「まず投稿を消してほしい」と考えるのが自然ですが、先に削除依頼をすることには注意が必要です。

削除が認められて投稿が消えてしまうと、その投稿が存在したことの証拠も消滅してしまいます。
適切に証拠保全ができていなければ、その後の損害賠償請求や刑事告訴が困難になる可能性があります。

したがって、対処の順番としては、①証拠保全 → ②弁護士相談(開示請求の要否判断) → ③必要に応じて削除依頼という流れが推奨されます。

誹謗中傷にあたる投稿の法的基準

削除や開示請求を行うためには、投稿が単に「不快である」というだけでなく、法律上の「権利侵害」に該当する必要があります。
Xで問題となりやすい主な権利侵害は以下のとおりです。

名誉毀損(名誉権侵害)

公然と事実を摘示し、人の社会的評価を低下させる行為です。

  • Xでよくある例: 「〇〇は会社の金を横領している」「△△店は賞味期限切れの食材を使っている」などの投稿
  • 要件: 公然性(不特定多数が閲覧可能)、事実の摘示、社会的評価の低下
  • 違法性阻却: 摘示された事実が真実であり、かつ専ら公益を図る目的がある場合は、違法性が否定されることがあります(刑法230条の2)

侮辱(名誉感情侵害)

事実を摘示せずに、人を侮辱する行為です。

  • Xでよくある例: 「バカ」「死ね」「ゴミ」「無能」等の罵詈雑言
  • 名誉毀損との違い: 名誉毀損は「具体的な事実の摘示」が要件ですが、侮辱は事実の摘示なく人格を貶める表現が対象です

プライバシー権侵害

私生活上の事実や、一般に知られていない情報を、本人の承諾なくみだりに公開する行為です。

  • Xでよくある例: 自宅住所、電話番号、勤務先、前科・前歴、病歴、交際関係の暴露。いわゆる「晒し」行為の多くがこれに該当します

肖像権侵害

本人の承諾なく、容貌や姿態を撮影・公表する行為です。

  • Xでよくある例: 顔写真を無断でアイコンに使用する、プライベートの写真を投稿に添付する行為

なりすまし(アイデンティティ権の侵害など)

他人の名前や写真を使用し、その人になりすましてアカウントを作成・投稿する行為です。
なりすましたアカウントで粗暴な発言を繰り返すなどして本人の社会的評価を低下させた場合は、名誉毀損や肖像権侵害、アイデンティティ権の侵害として法的措置の対象となります。

X社への削除依頼の方法

被害に遭った際、裁判手続き以外でまず検討できるのがX社への削除依頼です。

違反報告(通報)機能による削除依頼

各ツイートやアカウントのメニューから、Xの運営に対して違反を報告できます。

  1. 対象のポスト右上の「…(三点リーダー)」をクリック
  2. 「ポストを報告する」を選択
  3. 報告の理由を選択(「攻撃的な行為や嫌がらせ」「プライバシー」など)
  4. 指示に従い、具体的な問題点を報告する

情報流通プラットフォーム対処法に基づく削除申請窓口

2025年4月1日に施行された情報流通プラットフォーム対処法(令和6年法律第25号による改正後の正式名称:特定電気通信による情報の流通によって発生する権利侵害等への対処に関する法律)により、Xを運営するX Corp. Japanは大規模特定電気通信役務提供者に指定されました。

これにより、X Corp. Japanには以下の義務が課されています。

  • 削除申請窓口の設置・公表義務(法22条): 権利侵害を報告するための窓口(https://help.x.com/ja/forms/japan-report)が新設されました。日本語での申請が可能です。
  • 7日以内の対応義務(法25条1項、施行規則16条): 削除申出を受けてから7日以内に、削除したか否か及びその理由を申出者に通知しなければなりません。
  • 削除基準の策定・公表義務(法26条): 投稿の削除に関する基準を策定し、公表する義務があります。

従来の通報機能では対応・非対応の結果すら通知されないことが多くありましたが、この新しい窓口を利用すれば、一定期間内に判断結果の通知を受けることができます。

※情報流通プラットフォーム対処法の詳細については、弊所のコラム「X(旧Twitter)の削除申請窓口設置と情報流通プラットフォーム対処法について」もご参照ください。(内部リンク)

削除依頼が通らない場合

ご自身で通報や削除申請を行っても、削除されないケースは少なくありません。
主な理由は以下のとおりです。

  • 表現の自由の重視: 日本の法律では違法となる可能性があっても、X社のポリシーに違反していないと判断されれば削除されないことがあります。
  • 権利侵害の判断は容易ではない: 投稿が正当な批判か誹謗中傷かの境界線は、プラットフォーム事業者では判断が難しい場合が多く、慎重な対応にならざるを得ません。

削除依頼が通らない場合は、裁判所を通じた法的手続きの利用を検討します。

裁判所を通じた削除(仮処分)

X社が任意での削除に応じない場合、日本の裁判所に対して「削除仮処分命令申立」を行います。
これは通常の裁判(訴訟)よりも迅速な手続きです。

削除仮処分の手続きの流れ

仮処分とは、判決を待っていると被害が拡大する恐れがある場合に、裁判所が暫定的な措置として削除を命じる手続きです。通常の訴訟よりも迅速に進行します。

  1. 弁護士に依頼し、申立書を作成・提出する
  2. 裁判所にて、債権者(被害者側)と債務者(X社側)の双方の言い分を聞く「審尋」が行われる
  3. 権利侵害が認められれば、担保金を供託した後、削除命令が発令される
  4. X社が投稿を削除する

X社は海外法人ですが、日本における代理登記がなされているため、日本の裁判所での手続きが可能です。

削除仮処分にかかる期間と費用の目安

  • 期間: 申立てから決定まで、おおむね1ヶ月~2ヶ月程度が一般的です。ただし、事案の複雑さやX社側の対応によって前後します。
  • 担保金: 裁判所に供託する担保金は、一般的に30万円程度です。ただし、事案により異なります。担保金は手続き完了後に還付されるのが通常です。

投稿者を特定する「発信者情報開示請求」

投稿を削除するだけでなく、「誰が書いたのか特定したい」「慰謝料を請求したい」「刑事告訴したい」という場合には、発信者情報開示請求を行います。

ステップ1:X社に対するIPアドレス等の開示請求

投稿者は通常、匿名で利用しているため、X社は投稿者の氏名や住所を知りません。
X社が保有しているのは、ログイン時の「IPアドレス」と「タイムスタンプ(接続時間)」等のログなどです。

まずは裁判所の手続き(仮処分など)を通じて、X社からこれらの情報の開示を受けます。

ステップ2:アクセスプロバイダへの契約者情報の開示請求

開示されたIPアドレスを調査することで、投稿者が利用したインターネット接続業者(アクセスプロバイダ)が判明します(例:NTTドコモ、KDDI、ソフトバンク、J:COM等)。

次に、特定したプロバイダに対して、「その時間にそのIPアドレスを使っていた契約者の氏名・住所」の開示を求めます。
プロバイダも任意では開示に応じないため、原則として裁判手続きが必要です。

発信者情報開示命令(非訟手続)による一括請求

2022年10月施行の改正プロバイダ責任制限法により、ステップ1とステップ2を一つの手続きで行える「発信者情報開示命令事件(非訟手続)」という制度が利用可能になりました。

従来は、①X社への仮処分と②プロバイダへの訴訟の2段階の手続きが必要でしたが、非訟手続では一連の裁判手続きとして処理できるため、手続きの迅速化が期待できます。

ただし、X社は対応が非常に遅く、提供命令の利用が事実上不可能といわれています。
そのため、IPアドレスから特定する場合、現在でも仮処分手続きを利用する方が良いかと思われます。

電話番号開示+弁護士会照会による特定ルート

Xでは、アカウント登録時に電話番号の登録を求められることがあります。
そのため、X社は電話番号の情報を保有している場合があります。
発信者情報開示命令では、X社に対して、当該アカウントに登録された電話番号の開示を求めることが可能です。

電話番号が開示された場合、弁護士会照会(弁護士法23条の2)を利用して、携帯電話会社から回線契約者の氏名・住所の開示を受けるルートがあります。

このルートは、IPアドレス経由の開示請求ではプロバイダのログが既に消去されている場合の代替手段として特に有効です。
なお、仮処分手続きでは電話番号の開示は認められませんが、発信者情報開示命令(非訟手続)では電話番号の開示が認められる場合があるというメリットがあります。

開示請求にかかる期間の目安

発信者情報開示請求の手続き全体(X社への開示請求からプロバイダへの開示請求まで)にかかる期間は、おおむね半年~1年程度です。
非訟手続の活用や電話番号ルートの併用により期間短縮が期待できますが、事案の内容やX社・プロバイダの対応状況によって前後します。

投稿者特定後の法的措置

投稿者の身元が判明した後は、以下の法的措置をとることができます。

損害賠償請求(慰謝料の相場)

特定した相手に対し、名誉毀損やプライバシー侵害等に基づく損害賠償(慰謝料など)を請求します。
まずは内容証明郵便等で示談交渉を行い、相手が応じない場合は民事訴訟を提起します。

慰謝料の一般的な相場(裁判例の傾向):

  • 個人に対する誹謗中傷: 10万円~50万円程度
  • 法人・事業者に対する誹謗中傷(営業上の損害がある場合): 50万円~100万円程度

上記はあくまで一般的な傾向であり、誹謗中傷の内容・頻度・拡散度・被害の程度等によって大きく異なります。
また、慰謝料に加えて、投稿者の特定にかかった弁護士費用(調査費用)の全部又は一部が損害として認められる場合もあります。

刑事告訴

投稿内容が刑事罰に該当する場合、警察に刑事告訴を行い、処罰を求めることができます。

  • 名誉毀損罪(刑法230条1項): 3年以下の拘禁刑又は50万円以下の罰金
  • 侮辱罪(刑法231条): 1年以下の拘禁刑若しくは30万円以下の罰金又は拘留若しくは科料

※侮辱罪は2022年の法改正により法定刑が引き上げられました。

重要: 名誉毀損罪と侮辱罪はいずれも親告罪です。被害者からの告訴がなければ検察官は起訴することができません(刑法232条1項)。そのため、犯人の処罰を求める場合には刑事告訴の手続きが必要です。

なお、プライバシー権侵害や肖像権侵害には直接の刑罰規定がないため、これらを根拠に刑事罰を科すことはできませんが、民事上の損害賠償請求は可能です。

X(旧Twitter)特有の注意点

「リツイート(リポスト)」の法的責任

他人の誹謗中傷投稿を単にリポスト(リツイート)しただけでも、法的責任を問われる可能性があります。
最高裁の判例では、リツイート行為によって元の投稿内容に賛同の意思を示し、他人の名誉を毀損したとして損害賠償責任が認められた事例があります。

したがって、元のポストだけでなく、それをリポストした人物に対しても開示請求や損害賠償請求が可能な場合があります。

引用リポストとコメント

引用リポスト(引用RT)を用いて、元の投稿に対して批判や中傷を加えるケースも多くあります。
この場合、引用元の投稿とあわせて文脈全体で判断されますが、コメント部分が誹謗中傷に該当すれば、法的措置の対象となります。

弁護士に依頼するメリットと費用の目安

複雑な手続きの代行

仮処分、発信者情報開示請求、訴訟といった専門的な手続きをすべて任せることができます。
特に、法的な主張構成(どの権利が侵害されたか、なぜ削除すべきか)の組み立ては、専門家でなければ困難です。

スピード対応によるログ消失の防止

プロバイダのログ保存期間は短いため、弁護士はタイムリミットを意識して手続きを進めます。
プロバイダに対するログ保存要請を先行して行うことも可能です。

相手方との交渉

特定後の示談交渉において、弁護士が代理人となることで、被害者本人が加害者と直接関わることなく、適正な慰謝料額での解決を目指せます。

費用の目安

インターネット上の誹謗中傷対策の弁護士費用は、手続きの内容によって異なります。
一般的には、削除仮処分や発信者情報開示請求はそれぞれ着手金+報酬金の構成となることが多いです。

弊所の費用体系については、特設ページをご参照ください。

よくある質問

Xの誹謗中傷で慰謝料はいくら取れますか?

一般的な傾向として、個人への誹謗中傷の場合は10万円~50万円程度、法人・事業者で営業上の損害がある場合は50万円~100万円程度です。

ただし、誹謗中傷の内容・頻度・拡散度・被害の程度等によって大きく異なり、上記はあくまで目安です。

投稿が既に削除されていても投稿者の特定はできますか?

投稿が削除されていても、X社やプロバイダにログが残っている限り、発信者情報開示請求により投稿者を特定できる可能性はあります。
ただし、ログの保存期間は限られているため、投稿の削除に気づいたら速やかに弁護士に相談してください。
削除前に証拠(スクリーンショット等)を保全していたかどうかも重要です。

匿名アカウントでも投稿者を特定できますか?

はい。

発信者情報開示請求は、匿名アカウントの投稿者を特定するための制度です。
X社からIPアドレスや電話番号の開示を受け、それをもとにプロバイダや携帯電話会社から契約者の氏名・住所の開示を受けるという手順で特定を進めます。

相手がVPNを使っていた場合、特定は可能ですか?

VPN(仮想プライベートネットワーク)を利用している場合、IPアドレスからの特定が困難になることがあります。
ただし、アカウントに登録された電話番号からの特定ルート(弁護士会照会)など、IPアドレス以外の方法で特定できる可能性もあります。

具体的な見通しは事案により異なりますので、弁護士にご相談ください。

自分で削除依頼して削除されなかった場合、弁護士に依頼すれば削除できますか?

弁護士が代理人となることで、法的根拠に基づいたより説得力のある削除依頼を行うことが可能です。
それでもX社が応じない場合は、裁判所に削除仮処分を申し立てることになります。
裁判所が権利侵害を認めて削除命令を発令すれば、X社は原則としてこれに従います。

まとめ

X(旧Twitter)での誹謗中傷は、拡散性が高く、被害者の名誉やプライバシーに深刻なダメージを与えるものです。
「ネット上の喧嘩」と軽視せず、権利侵害には毅然とした対応をとることが、ご自身を守り、さらなる被害を防ぐために重要です。

2025年4月に施行された情報流通プラットフォーム対処法により、X社への削除申請の手続きは以前より整備されましたが、依然として裁判手続きが必要となるケースは多くあります。
手続きには「ログ保存期間」という時間的な制約がありますので、悩んでいる間に証拠が消えてしまわないよう、被害に遭われた方はできるだけ早い段階で弁護士へご相談ください。

インターネットの誹謗中傷等についてはこちら

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この記事を書いた人

髙田法律事務所の弁護士。東京弁護士会所属 登録番号60427
インターネットの誹謗中傷や離婚、債権回収、刑事事件やその他、様々な事件の解決に携わっている。
最新のビジネスや法改正等についても日々研究を重ねている。

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