LINEオープンチャットでの誹謗中傷|開示請求と損害賠償の可否

目次

【この記事の結論・要約】

  • LINEオープンチャットは不特定多数が閲覧できるため、通常のLINEグループよりも名誉毀損(公然性)が認められやすく、発信者情報開示請求の対象となります。
  • 匿名(ニックネーム)での投稿であっても、法的手続き(発信者情報開示請求)を通じて投稿者の氏名・住所を特定し、損害賠償を請求することが可能です。
  • 投稿の特定にはログの保存期間が影響するため、被害に遭った際は迅速に投稿内容のスクリーンショットを保存し、さらに、「URLを取得して」弁護士等の専門家に相談することが重要です。

はじめに

LINEオープンチャットは、共通の趣味や目的を持つ人々が匿名で交流できる便利なツールですが、その匿名性が悪用され、特定の個人に対する誹謗中傷や「晒し」行為が横行している現実があります。

「ニックネームだから特定されない」「クローズドなコミュニティだから何を書いても自由だ」という誤解が、攻撃的な投稿を加速させるケースも少なくありません。
しかし、法的な観点から見れば、オープンチャット上での暴言や嫌がらせは、他のSNSと同様に法的責任を問われる可能性があります。

本記事では、LINEオープンチャットでの誹謗中傷に対し、どのような法的手段(開示請求や損害賠償)が取れるのか、その成立要件と手順について解説します。

第1章:LINEオープンチャットの性質と誹謗中傷

1-1. オープンチャットと通常のLINEグループの違い

通常のLINEグループは、既存の「友だち」や特定の招待者に限定された密室性の高い空間ですが、オープンチャットはURLや検索を通じて不特定多数が参加できる性質を持っています。

法律上、名誉毀損が成立するためには「公然(不特定または多数の人が知り得る状態)」という要件が必要ですが、オープンチャットはその仕様上、この公然性の要件を非常に満たしやすい媒体と言えます。

※グループチャットは、所属している人数次第では公然性の要件を満たす可能性はありますが、情報流通プラットフォーム対処法上の「特定電気通信」に該当しないと判断され、投稿者の特定ができない可能性があります。そのため、投稿者が誰なのかが判明している場合でなければ対処が難しい可能性があります。以下のコラムもご確認ください。

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1-2. 匿名性と法的責任の所在

オープンチャットでは、LINE本体のアカウントとは別のプロフィール(名前やアイコン)を設定できます。
しかし、これはあくまで表面上の匿名性に過ぎません。

発信者情報開示請求により、IPアドレス等を経由して、最終的に投稿者の氏名や住所に辿り着くことが可能です。

第2章:成立し得る主な権利侵害の類型

LINEオープンチャットでの嫌がらせが、具体的にどのような権利侵害に該当するのか整理します。
なお、ここで解説している成立要件は、わかりやすさのために簡単に説明したものになります。

2-1. 名誉毀損

事実を摘示し、他人の社会的評価を低下させる行為です。

  • 例: 「〇〇(本名や特定可能な情報)は過去に横領をした」「不倫をしている」といった具体的な投稿。
  • 成立要件: 公然と事実を摘示し、社会的評価を下げること。真実であっても、公共性・公益性がない場合は名誉毀損となり得ます。

2-2. 侮辱

事実を摘示せず、抽象的な言葉で他人を罵倒する行為です。

  • 例: 「バカ」「死ね」「デブ」「キモい」といった罵詈雑言。
  • 成立要件: 本人の「名誉感情」を侵害する場合に認められます。近年、侮辱罪の厳罰化により、ネット上の暴言に対する責任追及は強化されています。

2-3. プライバシー侵害・個人情報の晒し

本人が公開していないプライバシー情報を、正当な理由なく公開する行為です。

  • 例: 住所、電話番号、勤務先、本人の写真、病歴などの無断掲載。
  • 成立要件: 公開されていない私生活上の事実であり、公開されたくないと考えるもの。

2-4. 脅迫・業務妨害

  • 脅迫: 「家を特定したから夜道に気をつけろ」といった、生命や身体への危害を予告する投稿。
  • 業務妨害: 営業目的のオープンチャットなどで、虚偽の情報を流して運営を妨げる行為。

第3章:「発信者情報開示請求」の手続き

犯人を特定し、謝罪や慰謝料を求めるためには、まず「発信者情報開示請求」を行う必要があります。

3-1. 手続きの二段階構造(または一体的手続き)

従来は、まずコンテンツ提供者(今回の場合はLINEヤフー株式会社)に対してIPアドレス等の開示を求め、その後、判明したプロバイダ(キャリア等)に対して氏名・住所の開示を求めるという二段階の手続きが必要でした。

現在は法改正により、「発信者情報開示命令」を利用することで、これらの一連の流れを一つの裁判手続きで行うことが可能になり、特定までの期間が短縮されています。

3-2. 開示が認められる要件

単に「不快だ」というだけでは開示されません。

  1. 権利侵害の明白性: 投稿内容が名誉毀損や侮辱などに該当することが明らかであること。
  2. 正当な理由: 損害賠償請求や刑事告訴のために必要であること。

3-3. ログの保存期間

ここが最も重要なポイントです。接続プロバイダが保有するアクセスログは、多くの場合3ヶ月から6ヶ月程度で削除されます。

この期間を過ぎてしまうと、どれだけ法的に正しい主張をしても、技術的に特定が不可能になります。

第4章:損害賠償(慰謝料)の相場と費用対効果

特定に成功した場合、相手に対して損害賠償を請求をすることが可能です。

4-1. 慰謝料の相場

誹謗中傷の内容や被害者の立場によりますが、一般的な相場は以下の通りです。

権利侵害の種類慰謝料の目安
個人の名誉毀損10万円 〜 50万円程度
事業者の名誉毀損50万円 〜 100万円以上(業務への影響による)
名誉感情の侵害(侮辱)数万円 〜 20万円程度
プライバシー侵害10万円 〜 50万円程度

4-2. 調査費用の請求

開示請求にかかった弁護士費用や実費などは、損害の一部として相手方に請求できる場合があります。
ただし、全額が認められるとは限らないため、実務上は「持ち出し」のリスクを考慮する必要があります。

第5章:被害に遭った際に行うべき初期対応

誹謗中傷を確認したら、冷静に証拠を固めることが解決への第一歩です。

5-1. 証拠の保存(スクリーンショット)

投稿が削除される前に、以下の情報がすべて入るようにスクリーンショットを保存します。

  • 投稿内容全文
  • 投稿者の名前(ニックネーム)
  • 投稿日時
  • 投稿のURL
  • 前後の文脈

オープンチャットの通常画面ではURLは表示されていませんが、メニューの「招待」から、「リンクをコピー」、「リンクをシェア」等でURLを取得することが可能です。

5-2. LINEへの通報と削除依頼

オープンチャット内の通報機能を利用して、運営に利用規約違反を報告します。
ただし、削除されると「開示請求のためのログ」が消えてしまう可能性があるため、削除依頼の前に必ず証拠を保存してください。

5-3. 弁護士への相談

発信者情報開示請求は、法的な論点整理と迅速な手続きが求められるため、個人で行うのは非常に困難です。
ログが消える前に、IT問題に詳しい弁護士へ相談し、法的手続きを検討しましょう。

おわりに

LINEの運営会社は、これまでなかなか対応をしなかったようですが(現在でも、弁護士会照会などへの対応は消極的)、近年、発信者情報開示請求に対応するようになったようです。

LINEオープンチャットで誹謗中傷を受けた場合は、早急に、インターネット問題に詳しい弁護士にご相談されることをお勧めいたします。

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この記事を書いた人

髙田法律事務所の弁護士。東京弁護士会所属 登録番号60427
インターネットの誹謗中傷や離婚、債権回収、刑事事件やその他、様々な事件の解決に携わっている。
最新のビジネスや法改正等についても日々研究を重ねている。

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