DV離婚の進め方|証拠の集め方と安全に離婚するための手順

目次

【この記事の結論・要約】

  • DVは法的にも重大な不法行為であり、「婚姻を継続し難い重大な事由」として裁判での離婚や慰謝料請求が認められる可能性が高い事案です。
  • 被害者の身の安全を確保するため、裁判所による保護命令(接近禁止命令・退去命令等)の手続きを優先し、加害者と直接接触せずに手続きを進める方法があります。
  • 離婚を有利に進めるためには、診断書、負傷部位の写真、暴言の録音、警察への相談実績など、客観的な証拠を早期に揃えることが不可欠です。

はじめに

ドメスティック・バイオレンス(DV)は、単なる夫婦喧嘩の延長ではなく、個人の尊厳を著しく侵害する違法行為です。
DVを理由とした離婚は、身体的暴力だけでなく、精神的暴力、性的暴力、経済的暴力も含まれます。

DV事案における離婚手続きは、通常の離婚とは異なり、「被害者の安全確保」「確実な証拠収集」を並行して行わなければならないという特殊性があります。
手順を誤ると、被害が拡大する恐れがあるため、慎重な対応が必要です。

本記事では、DV離婚を実現するための具体的要件、証拠収集の実務、そして安全に離婚するための法的手続きについて、解説します。

第1章:DVと離婚事由

1-1. 離婚事由としてのDV

日本の民法第770条第1項では、裁判で離婚が認められる5つの事由を定めています。

(裁判上の離婚)
第七百七十条 夫婦の一方は、次に掲げる場合に限り、離婚の訴えを提起することができる。
一 配偶者に不貞な行為があったとき。
二 配偶者から悪意で遺棄されたとき。
三 配偶者の生死が三年以上明らかでないとき。
四 配偶者が強度の精神病にかかり、回復の見込みがないとき。
五 その他婚姻を継続し難い重大な事由があるとき。
2 裁判所は、前項第一号から第四号までに掲げる事由がある場合であっても、一切の事情を考慮して婚姻の継続を相当と認めるときは、離婚の請求を棄却することができる。

DVは通常、同条1項5号の「婚姻を継続し難い重大な事由」に該当します。

暴力行為が繰り返され、夫婦間の信頼関係が破壊されて修復不可能な状態にある場合、相手が離婚を拒否していても、裁判所の判決によって強制的に離婚を成立させることが可能です。

1-2. 認められるDVの態様

裁判実務において、離婚原因として考慮されるDVには主に以下の4つの類型があります。

  • 身体的DV: 殴る、蹴る、物を投げつける、首を絞めるなどの身体的攻撃。
  • 精神的DV: 執拗な暴言、無視、人格否定、大声での恫喝(モラルハラスメントを伴うもの)。
  • 性的DV: 性行為の強制、避妊への非協力など。
  • 経済的DV: 生活費を渡さない、外で働くことを禁じる、借金を負わせるなどの制限(2号の「悪意の遺棄」に該当する可能性も)。

1-3. 慰謝料の算定基準

DVによる慰謝料は、暴力の頻度、期間、負傷の程度、後遺症(PTSD等)の有無によって算定されます。
一般的な相場は100万円~200万円ですが、暴力の悪質性が高い場合や、それによって就労不能に陥った場合などは、さらに高額化する傾向にあります。

第2章:身を守るための法的手段「保護命令」

DV離婚において、何よりも優先されるべきは被害者の生命と身体の安全です。
加害者の追及から逃れるため、裁判所が発する保護命令の活用を検討する必要があります。

2-1. 保護命令の種類

DV防止法(配偶者からの暴力の防止及び被害者の保護等に関する法律)に基づき、裁判所は以下の命令を発することができます。

  • 接近禁止命令:1年間、 被害者の身辺につきまとったり、住居や勤務地の近くを徘徊したりすることを禁じる。
  • 退去命令: 被害者と共に生活する住居から、加害者を2か月間退去させる(建物の所有者又は賃借人が被害者のみである場合において、被害者の申立てがあったときは6か月間)。
  • 電話等禁止命令: 連続した電話、メール、SNSの送信などを禁じる。
  • 子・親族への接近禁止命令: 被害者の子供や親族に対しても接近を禁じる。

2-2. 発令の要件

保護命令は、被害者が裁判所に申し立てて、裁判所が配偶者からの更なる身体に対する暴力等により、その生命又は心身に重大な危害を受けるおそれが大きいと判断した場合に発令されます。

保護命令を申し立てるには、原則として配偶者暴力相談支援センター(女性相談所等)または警察への相談実績が必要です。
これらの機関への相談履歴がない場合、公証役場での「宣誓供述書」の作成が求められます。

2-3. 違反した場合の罰則

保護命令に違反した加害者には、「2年以下の拘禁刑(懲役)又は200万円以下の罰金」という刑事罰が科されます。

第3章:DV離婚を有利に進めるための証拠収集

DVを理由とした離婚訴訟や慰謝料請求において、最も重要なのは「暴行等の事実」を客観的に証明することです。

3-1. 医療機関の診断書

負傷した際は、速やかに外科、整形外科、または精神科(PTSD等の場合)を受診し、「受傷原因が配偶者からの暴力であること」を医師に伝え、詳細な診断書を作成してもらいます。
通院歴が継続していることは、被害の深刻さを証明する証拠となります。

3-2. 写真による記録

怪我の部位、壊された家具や壁、散乱した部屋の様子などは、すべて写真に残します。

  • ポイント: 怪我の写真は、部位だけでなく、本人の顔も一緒に写るように撮影し、いつ撮影したものか(日付データ)が残るようにします。

3-3. 暴言の録音・動画

身体的暴力だけでなく、怒鳴り声や執拗な詰問、人格を否定するような発言をICレコーダーやスマホで録音します。

  • ポイント: 単発の録音よりも、日常的に繰り返されていることが分かるよう、複数のデータを収集することが望ましいです。

3-4. 第三者機関への相談実績

警察(110番通報履歴、相談票)、配偶者暴力相談支援センター、市区町村の相談窓口への相談実績が、暴行等があったことの証拠となる可能性があります。

3-5. 被害日記

いつ、どのような状況で、どのような暴力を受けたかを詳細に記した日記も証拠となり得ます。

  • ポイント: 出来事だけでなく、その時の恐怖心や心身の状態も具体的に記載します。後からまとめて書くのではなく、その都度記録することが信憑性を高めます。

第4章:DV離婚の具体的な手順

DV事案では、加害者と対面せずに離婚を進める「非接触」の徹底が基本です。

4-1. ステップ1:安全な場所への避難(別居)

多くの場合、同居したままの離婚協議は困難かつ危険です。
まずは実家、賃貸物件、あるいは自治体のシェルターなどへ避難し、物理的な距離を確保します。
この際、住民票の閲覧制限の手続きも同時に行います。

4-2. ステップ2:保護命令の申立て

別居後、加害者が追いかけてくる危険がある場合は、前述の保護命令を裁判所に申し立てます。
これにより、加害者が接近できないようにします。

4-3. ステップ3:離婚調停の申立て

DV事案では、当事者同士の話し合い(協議離婚)は行わず、家庭裁判所での離婚調停を利用することが一般的です。

  • 安全対策: 調停では両当事者が顔を合わせないように配慮がなされます。待ち合わせ場所や入退室の時間をずらす、衝立(ついたて)を置く、あるいは別の部屋で待機するなどの措置を裁判所に求めることが可能です。

4-4. ステップ4:離婚訴訟

調停で相手が離婚に応じない、あるいは不当に低い慰謝料しか提示しない場合、離婚訴訟(裁判)へと移行します。
ここで、収集した証拠を提出し、裁判官による判決を仰ぎます。

第5章:共同親権導入とDV離婚の留意点

改正民法の施行により、離婚後の**「共同親権」**が選択肢に加わりますが、DV事案においては慎重な判断がなされます。

5-1. DVがある場合の例外規定

改正法においても、「父母の一方が他の一方から身体に危害を加えるおそれがある場合(DV)」(新民法819条7項2号)や「子の心身に害悪を及ぼす(虐待)おそれがある場合」(新民法819条7項1号)など、子の利益を害すると認められるときは、裁判所は必ず「単独親権」を命じなければならないとされています。

5-2. 適切な主張の重要性

共同親権の原則導入により、加害者が「子供に会いたい」「親権を持ちたい」と主張し、離婚後も被害者を支配しようとするケースが懸念されます。
そのため、離婚手続きの中でDVの事実を立証し、「共同親権が子の利益に反する状況であること」を主張し続けることが、離婚後の安全を確保する上で重要となります。

おわりに

DV離婚は、一般的な離婚に比べて慎重になる必要がありつつも緊急性を要します。
加害者の支配下から脱却するためには、法的な保護(保護命令)と、将来を見据えた証拠収集が不可欠です。

感情的になりすぎず、客観的な証拠を積み重ねていくことが、最終的に有利な条件での離婚、そして何よりあなた自身の安全な生活の確保へと繋がります。

もし現在、身の危険を感じているのであれば、まずは警察や専門の相談窓口へ連絡し、物理的な安全を確保することから始めてください。
その上で、早急に弁護士にご相談いただければと思います。

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この記事を書いた人

髙田法律事務所の弁護士。東京弁護士会所属 登録番号60427
インターネットの誹謗中傷や離婚、債権回収、刑事事件やその他、様々な事件の解決に携わっている。
最新のビジネスや法改正等についても日々研究を重ねている。

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