詐欺罪で逮捕されたら|成立要件と量刑・示談の重要性

目次

【この記事の結論・要約】

  • 詐欺罪は「欺罔」「錯誤」「処分行為」「財物・利益の移転」の4要件すべてが因果関係で繋がった場合に成立し、刑罰は「10年以下の拘禁刑(懲役)」のみと定められた重罪です。
  • 逮捕された場合、最長で23日間の身柄拘束が続く可能性があり、起訴されると初犯であっても被害額や悪質性によっては実刑判決となるリスクがあります。
  • 刑事処分の軽減には、被害者への謝罪と被害弁償を含む「示談」の成立が極めて重要であり、これが起訴・不起訴の判断や量刑に重大な影響を与えます。

はじめに

詐欺罪(刑法246条)は、他人の「信頼」を裏切って財産を搾取する犯罪であり、日本の刑事実務において非常に厳しく処罰される傾向にあります。
特殊詐欺の蔓延を受け、近年では組織的な犯罪だけでなく、個人的な借用金トラブルや無銭飲食なども厳格に捜査されるケースが増えています。

詐欺罪には罰金刑の規定がなく、有罪となれば必ず拘禁刑(懲役刑)が科される点に、この罪の重さが表れています。
本稿では、詐欺罪が成立するための法的な構成要件から、逮捕後の刑事手続き、量刑の判断基準、そして示談が持つ法的な意味合いについて解説します。

第1章 詐欺罪が成立するための4つの要件

詐欺罪は、刑法第246条に規定されています。

(詐欺)
第二百四十六条 人を欺いて財物を交付させた者は、十年以下の拘禁刑に処する。
2 前項の方法により、財産上不法の利益を得、又は他人にこれを得させた者も、同項と同様とする。

裁判において詐欺罪を成立させるためには、以下の4つの要素(構成要件)がすべて因果関係で結ばれている必要があります。

1-1. 欺罔(ぎもう)行為

「人を欺くこと」、すなわち真実ではないことを告げて相手を騙す行為を指します。
単なる嘘だけでなく、真実を告げる義務があるにもかかわらず、あえて黙っている行為(不作為による欺罔)も含まれます。
重要なのは、相手が「財産を処分するかどうかを判断するための重要な事実」について嘘をついていることです。

1-2. 錯誤(さくご)

欺罔行為の結果、相手方が内容を真実であると誤認することを指します。
最初から騙されていると分かっていながら面白半分に金を渡したような場合、錯誤がないため詐欺罪(既遂)は成立せず、詐欺未遂罪(刑法250条)にとどまります。

1-3. 処分行為

騙された相手方が、自らの意思で財物を渡したり、利益を移転させたりする行為を指します。
「騙されて自分から渡した」という点が、相手の意思に反して盗み出す「窃盗罪」との大きな違いです。
処分行為には、現金の手渡しだけでなく、銀行振込や、借金の免除といった無形の利益も含まれます。

1-4. 財物の移転と因果関係

最終的に、加害者または第三者が財物や利益を手に入れることで、詐欺罪は既遂となります。
これら1-1から1-4までの各要素が、「嘘をついたから(1)、相手が勘違いし(2)、その勘違いに基づいて(3)、財産を渡した(4)」という一連の因果関係で繋がっていることが不可欠です。

1-5. 故意

これまでは詐欺罪が成立するための客観的要件についてみてきました。
犯罪が成立するためには、客観的要件だけでなく、主観的な要件として、犯罪事実を認識・認容していたという故意が必要です。
詐欺罪の場合、上記の4要件に加えて、これらの事実を認識・認容していたことが認められる必要があります。

第2章 詐欺罪の種類と具体的なケース

詐欺罪には、有形・無形の対象に応じて「1項詐欺」と「2項詐欺」に分かれます。

2-1. 1項詐欺(財物詐欺)

現金や物品など、物理的な「物」を騙し取るケースです。

  • 借用金詐欺: 最初から返す意思や能力がないのに、嘘の理由を並べて金を借り、そのまま返済しない行為。
  • 結婚詐欺: 結婚する意思がないのに、結婚を餌にして金品を要求する行為。

2-2. 2項詐欺(利益詐欺)

目に見えない「財産上の利益」を騙し取るケースです(刑法246条2項)。

  • 支払免除: 暴力的な脅しを伴わずに嘘をついて「借金は返さなくていい」と相手に言わせる行為。
  • 無銭飲食・無銭宿泊: 代金を支払う意思がないのに、あるように見せかけてサービスを受ける行為。
  • キセル乗車: 不正な方法で運賃の支払いを免れる行為。

2-3. 電子計算機使用詐欺(刑法246条の2)

人間ではなく、コンピュータに対して虚偽の情報や不正な指令を与えて、財産上の利益を得る犯罪です。
オンラインバンキングでの不正送金や、プリペイドカードの残高を不正に書き換える行為などがこれに該当します。

第3章 逮捕後の手続きと身柄拘束の期間

詐欺罪で逮捕された場合、警察・検察による集中的な取り調べが行われます。

3-1. 逮捕から48時間以内:検察官への送致

警察が逮捕した被疑者について、身柄を拘束し続ける必要があると判断した場合、48時間以内に検察官へ事件を送致(送検)します。
この間、たとえ家族であっても面会が制限されることが一般的です。

3-2. 送致から24時間以内:勾留請求の判断

事件を引き継いだ検察官は、さらに身柄拘束が必要か(証拠隠滅や逃亡の恐れがないか)を検討し、24時間以内に裁判官へ「勾留請求」を行います。
裁判官がこれを認めると、引き続き警察署の留置場などで拘束されることになります。

3-3. 勾留期間:最大20日間の身柄拘束

勾留の期間は原則10日間ですが、捜査が複雑な詐欺事件ではさらに10日間延長されることが多く、合計で最大20日間に及ぶことがあります。
この期間の最後に、検察官が「起訴」か「不起訴」かを決定します。

第4章 詐欺罪の量刑と「初犯」の扱い

詐欺罪は、他の財産犯と比較しても刑罰が重い部類に入ります。

4-1. 刑罰の内容:拘禁刑(懲役刑)のみの重罪

前述の通り、詐欺罪には罰金刑がありません。
つまり、裁判で有罪になれば、判決は拘禁刑(懲役刑)のみになります。
起訴された場合、いかにして「執行猶予」を勝ち取るかが、刑務所への収監を避けるための最大の焦点となります。

4-2. 初犯で執行猶予がつく条件

初犯であれば必ず執行猶予がつくわけではありません。裁判所は以下の要素を総合的に判断します。

  • 被害額: 数十万円程度であれば執行猶予の可能性が高まりますが、数千万円規模になると初犯でも実刑の可能性が濃厚です。
  • 犯行の態様: 計画的か、組織的か、あるいは単発の衝動的なものか。
  • 被害弁償の有無: 最も重視される要素です。後述する示談が成立しているかどうかが鍵となります。

4-3. 実刑判決が下されるケース

以下のような事情がある場合、初犯であっても実刑(刑務所行き)となるリスクが極めて高くなります。

  • 特殊詐欺(オレオレ詐欺等)の末端組織に関与している場合。
  • 被害者が多数に上る場合。
  • 被害額が大きく、かつ全く返済が行われていない場合。
  • 犯行を否認し続け、反省の態度が見られない場合。

ただし、特殊詐欺などのケースでも、執行猶予が付くこともあります(筆者にも経験があります)。

第5章 示談交渉の重要性と法的効果

詐欺事件の解決において、「示談」は極めて重要です。

5-1. 被害弁償と起訴猶予の関係

検察官は、罪を犯したことが明白であっても、被害者への賠償が完了し、被害者が「許す(処罰を望まない)」という意思を示している場合、起訴猶予(不起訴処分)を下すことがあります。
不起訴になれば前科はつかず、身柄も釈放されます。

5-2. 示談が量刑に与える影響

既に起訴されてしまった後であっても、判決が出るまでに示談が成立すれば、量刑において有利な事情として考慮されます。
「被害者の損害が填補されている」という事実は、裁判官が執行猶予を付すかどうかの判断において、強力なプラス材料となります。

5-3. 示談の内容に含まれるべき事項

適切な示談書には、通常以下の内容が含まれます。

  • 被害金額の全額(または一部)の支払い。
  • 謝罪の意思表明。
  • 被害者が処罰を求めない旨の条項(宥恕条項)。
  • 今後、お互いに民事上の請求を行わない旨の確認(清算条項)。

おわりに

詐欺罪は、科される刑罰が非常に重い犯罪です。

逮捕された後の手続きは非常に迅速に進むため、客観的な証拠の収集や、被害者への誠実な謝罪・弁償(示談交渉)をどのタイミングで行うかが、その後の人生を大きく左右します。
刑事手続きの各段階において、自身の権利を守り、適切な防御を行うためには、冷静な判断と法的な知見に基づいた対応が不可欠です。

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この記事を書いた人

髙田法律事務所の弁護士。東京弁護士会所属 登録番号60427
インターネットの誹謗中傷や離婚、債権回収、刑事事件やその他、様々な事件の解決に携わっている。
最新のビジネスや法改正等についても日々研究を重ねている。

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