有責配偶者からの離婚請求は認められる?判例と認められるケース

目次

【この記事の結論・要約】

  • 原則として、浮気や不倫をした側(有責配偶者)からの離婚請求は、信義則(信義誠実の原則)に反するため認められません。
  • しかし、「相当に長い別居期間」「未成年の子がいない」「相手が過酷な状況に陥らない」という3つの条件を満たす場合には、裁判でも離婚が認められる可能性があります。
  • 裁判まで至らずとも、十分な財産分与や解決金の提示など、誠意ある条件提示を伴う協議・調停によって離婚を成立させるケースが実務上は多く見られます。

はじめに

「不倫をしてしまったが、今の配偶者とはもうやっていけない」「他に好きな人ができて、新しい人生を歩みたい」

たとえ自らが不貞行為などの原因を作った「不倫した側」であっても、愛情が枯渇した夫婦関係を維持し続けることは、本人にとっても、相手にとっても、非常に苦しいものです。

本稿では、不倫をしてしまった側からの離婚請求が認められるかどうか、認められる場合の条件などについて、解説します。

第1章 有責配偶者とは?

1-1. 有責配偶者の定義

有責配偶者とは、自身の不貞行為(浮気)や悪意の遺棄(正当な理由なく同居・協力・扶助義務を放棄すること)などによって、婚姻関係を破綻させた直接的な原因を作った側を指します。

代表的なケースは以下の通りです。

  • 不貞行為: 他の人と肉体関係を持つ(浮気・不倫)。
  • 悪意の遺棄: 生活費を渡さない、理由もなく家を出て帰らないなど。
  • DV・モラハラ: 暴力や言葉による虐待で関係を壊す。

1-2. 「信義則」による制約

通常、「浮気した側」からの離婚請求は認められません。
これは、「信義則(信義誠実の原則)に反する」からとされています。

「自ら原因を作って家庭を壊しておきながら、自分の都合で勝手に離婚を求めるのは、道徳的にも法的にも許されない(クリーンハンズの原則)」という考え方が根底にあります。

1-3. 裁判所の基本的なスタンス

かつての判例では「有責配偶者からの離婚請求は認められない」という絶対的な拒絶がありました。
しかし、昭和62年の最高裁判決(後述)を境に、「婚姻が既に破綻しているときには、一定の条件を満たす場合に、有責性のみを理由に拒絶はしない」という柔軟なスタンスへと移行しています。

第2章 離婚が認められるための「3つの条件」

有責配偶者からの離婚請求は、かつては原則として認められませんでした。
しかし、最高裁判所は昭和62年9月2日の大法廷判決で判例を変更し、一定の条件下で離婚請求を認める基準を示しました 。

2-1. 条件①:相当に長い別居期間

夫婦が長期間別居しており、事実上の「夫婦としての実態」が失われていることが必要です。

  • 「相当に長い」とは?: 以前は10年以上が目安でしたが、近年は8年〜10年程度、事案によっては6年程度で認められることもあります。
  • 判断基準: 婚姻期間に対する別居期間の割合も重視されます(例:結婚3年に対し別居5年は「長い」とされる可能性が高い)。

2-2. 条件②:未成年の子がいないこと

夫婦の間に、まだ自立していない未成年の子供がいないことが条件です。

  • なぜ必要か: 親の身勝手な事情(不倫など)で離婚を認めると、子供の養育や福祉が損なわれる懸念があるためです。
  • 実務上の変化: 子が高校生や大学生など、自立に近い年齢であれば認められやすくなる傾向があります。

2-3. 条件③:相手方が過酷な状況に陥らないこと

離婚を認めることで、離婚を拒否している側の配偶者が精神的・社会的・経済的に極めて過酷な状況(生活に困窮するなど)に陥るような「特段の事情」がないことが必要です。

これを「苛酷条項(かこくじょうこう)」と呼ぶこともあります。

ただし、相手方が離婚によって受ける経済的な不利益は財産分与や慰謝料で解決されるべきと考えられており、実務上、この「特段の事情」があると認められることはほとんどありません。

2-4. 上記の条件は必須ではなく考慮要素

判例変更以降、上記の3条件をベースに判断する裁判例が増えていますが、この3条件は必須のものではありません。
これらはあくまでも考慮要素に過ぎず、3条件全てを満たせていない場合でも、婚姻関係が破綻していて回復可能性がないとして離婚請求が認められている事案も存在します。

例えば、高校2年生の子がいる事案で離婚請求が認められたもの(最判平成6年2月8日判時1505・59)や、同居期間22年に対し別居期間が6年の事案で離婚請求が認められたもの(東京高判平成14年6月26日判時1801・80)などがあります。

第3章 「不倫した側」が離婚を勝ち取るための戦略

裁判で判決を得るには長い年月がかかります。
そのため、実際には「裁判外の交渉」で合意を目指すのが現実的です。

3-1. 誠意ある金銭的解決の提示

「不倫した側」が離婚を成立させる最も有用な手段は、相場を超える金銭的補償(解決金)の提示です。

  • 慰謝料の上乗せ: 通常の相場(100万〜300万円)に加え、相手の将来の生活を担保する資金を上乗せします。
  • 財産分与の譲歩: 本来なら5:5の分与を、4:6や3:7など相手方に有利に配分します。

3-2. 別居を先行させ「破綻の実態」を作る

同居したままでは離婚請求はまず認められません。

  • 別居の開始: まずは別居を開始し、物理的な距離を置くことで「夫婦関係の修復が不可能であること」を実績として積み上げます。
  • 婚姻費用の支払い: 別居中も、相手に対して適切な生活費(婚姻費用)を欠かさず支払い続けることが重要です。これを怠ると「悪意の遺棄」となり、さらに有責性が高まってしまいます。

3-3. 弁護士を通じた交渉

「浮気した側」が直接本人と交渉しようとしても、相手は感情的になり、「絶対に離婚しない(相手を苦しめるために縛り付ける)」という態度を硬化させがちです。

弁護士が介入することで、「感情論」から「条件に関する話し合い」へとフェーズを移行させることができます。

第4章 よくある誤解と注意点

4-1. 「時間が経てば自動的に離婚できる」は嘘

「別居して数年経てば勝手に離婚が成立する」という制度は日本にはありません。
相手に納得してもらって離婚届に署名してもらうか、調停で合意するか、裁判で判決を得る必要があります。

4-2. 性格の不一致が先にあれば「有責」ではない?

「不倫する前から、既に性格の不一致で家庭は崩壊していた」という主張はよくなされます。

  • 証明の難しさ: もし不倫前に既に夫婦関係が破綻していたと証明できれば、有責配偶者とはみなされない可能性があります。ただし、婚姻関係が破綻していたことを証明するのは、一般的にはハードルが高いです。
  • 証拠: 不倫前から別居していた、あるいは家庭内別居の状態が長く続いていたことを示す日記やメールなどの証拠が必要です。

4-3. 相手も不倫をしている(双方有責)

もし相手側も不倫をしている、あるいはDVを行っているなどの有責性がある場合、「双方有責」として、有責配偶者からの離婚請求の制限が緩和されることがあります。

おわりに

有責配偶者からの離婚請求は非常にハードルが高い手続きです。
しかし、認められるケースもありますし、交渉によって離婚が成立するケースも多々存在します。

自身が不倫をしてしまったけども離婚をしたい、とお悩みの方は、一度弁護士にご相談ください。

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この記事を書いた人

髙田法律事務所の弁護士。東京弁護士会所属 登録番号60427
インターネットの誹謗中傷や離婚、債権回収、刑事事件やその他、様々な事件の解決に携わっている。
最新のビジネスや法改正等についても日々研究を重ねている。

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