投資詐欺の被害回復について

現在、仮想通貨の発達、物価の高騰その他の事情から、投資への関心が高まっています。
そこに付け込んだ犯罪として、投資詐欺が大変増えています。
投資詐欺と一口にいっても、マッチングアプリ等を利用して好意に付け込んで投資をさせるロマンス詐欺(加害者が海外の人物あるいは海外の人物を装っているものを国際ロマンス詐欺などと言います。)や、特定の仮想通貨の銘柄が高騰する、自身が運用すれば儲かるなどと吹聴し、これに投資させる仮想通貨詐欺など、インターネットを利用した複雑なケースが増えてきています。
ここで挙げたようなロマンス詐欺や仮想通貨詐欺も、その態様は様々かつ複雑であり、仮想通貨詐欺などは、偽のサイトやアプリ、ウォレットなどまで作成して巧妙に金銭を騙し取ろうとするものもあります。

まず、大前提として、この被害金を取り戻すことは非常に困難です
ロマンス詐欺などに使われるようなメッセージアプリは匿名性が高く、アプリ運営会社が弁護士等からの開示に応じなかったり、そもそも運営会社が利用者の情報を持っていないこともあります。
また、仮想通貨詐欺も、ウェブサイトの作成者・運営者がどこの誰なのかを突き止めるのは非常に困難です。現金取引であればまだしも、仮想通貨を送金したような場合、仮想通貨の取引自体はブロックチェーンにより追跡することはできるのですが、取引先のウォレットがどこの誰のものなのかを特定することは困難です。

ただ、このような状況でも、回収できる可能性はゼロではありません。
そのうちの一つとして、詐欺に関与した者が特定できている場合などがあります。
詐欺への関与方法は様々ですが、例えば、振込先の口座の提供や、投資の勧誘への関与などがあります。

口座の提供は、犯罪による収益の移転防止に関する法律(犯罪収益移転防止法)の第28条1項2項で禁止されている犯罪行為です。
口座を提供する方法で詐欺に関与してしまった場合、民法719条の共同不法行為により、損害賠償をする責任を負います。
ただし、口座提供者は資力がないことが多く、被害回復には到底及ばないというのが実情です(そもそも、口座提供をした理由も、数万円のお金欲しさからということが多い。)。
また、口座提供者が負う責任の範囲も、提供した口座に振り込まれた金銭の部分だけなのか、詐欺被害全体なのか、裁判官によっても判断が分かれているところです(私が事件担当時に調べた限りでは、前者の裁判例の方が多かったように思います。)。
さらに、最近では、オンラインでの口座開設ができる金融機関もあるのですが、偽造された公的書類を用いてオンラインで口座開設をするというケースもあるようです。
私が見たケースだと、実在の人物が「山田太郎(仮名)」であるところ、偽造された書類などを用いて、「山田太朗(仮名)」という名義の口座を作成したというケースがありました。
この場合、口座提供者(関与者)が誰なのかを特定することが非常に困難となります。

次に、投資勧誘に関与してる者が特定できているケースがあります。
メッセージアプリ等で勧誘している場合でも、インターネットだけでなくリアルでの集まりなどを催してそこで勧誘するというケースもありますし、口コミという形で勧誘するケースもあります。
これは、どの程度関与しているかによって、詐欺の責任を負うのかどうかが変わります。
「どこまでならセーフ、どこまでならアウト」という明確な線引きはできないのですが、どの程度内情を知っているのか、どの程度積極的な勧誘行為が行われていたのか、リスク告知はしていたのか、などから判断されることが多いようです。
この類型は、被害者側からは、勧誘者が加害者とどの程度関係性があるのか不透明なことも多く、また、口頭での勧誘だと証拠が残りにくいこともあって、こちらの主張が認められるハードルはかなり高いです。
私が過去に担当した事案では、相手がメッセージアプリに証拠を残してくれており、かつ、相手が相手側に不利となる証拠を自分から出してくれたことで、相手の責任が認められたというものがありました(ただ、それでも一部認容。)。
ただ、このケースはかなり運が良いケースといえます。

今回は、あくまでも詐欺被害回復の方法の一部を紹介しました。
大前提として、被害回復が困難であることを理解した上で、どれぐらい費用をかけてどこまでの方法を採るのか、弁護士等とご相談されることをお勧めします。

  • URLをコピーしました!
  • URLをコピーしました!
目次